ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜
□縁
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「じゃあ、あたし店前の掃き掃除してきますね。」
「おぅ、わりぃな!」
玄関で靴を履いていたあたしの後ろから、大黒さんがすまなさそうに謝ってきた。
「いえ、お世話になってるんだしこれくらいさせて下さい!」
「ホントにいーのぉ?白りんが気にするコトないのに…。」
小福さんも大黒さんの後ろからあたしの事を気にしていた。
「お2人とも色々お忙しいですし、あたしこれ位しかできないですから大丈夫です!」
「じゃあ、その言葉に甘えんぜ。俺と小福は中にいるけど、何かあったらすぐ声かけるか、中入れよ!ま、店前だし大丈夫だとは思うけどよ」
「はい!」
あたしはそう言って表に出た。
今は昼前。
基本夜に出歩く死神は、今の時間きっと現れる事はない。
それにいくら外に出るなと言われても、所詮は店前だ。
あたしは何の不安もなく、店の前をホウキで掃いていた。
平日のこの時間はとてもゆっくりしている。
朝は通学でちらほら人を見かけるこの道も、今は静か過ぎるくらい誰もいない。
「以外と寒いな…」
時期にすれば春だと言うのに、風はまだ少し冷たい。
あたしは落ち葉を塵取りに集めようと、しゃがんだ。
ん?
あたしは自分の足元に落ち葉以外の何かがあるのを見つけた。
…これ…花びら?
そう思った時
ふと、あたしに影がかかった。
あたしは顏を上げて、影の主を見た。
「夜ト…?」
あたしはまさかそこに夜トがいるとは思わなかったので、かなりビックリした。
「夜ト、剛ちゃんと出掛けたんじゃ…」
話の途中なのに、夜トは後ろを向いて歩き出した。
「ちょ、ちょっと!夜ト!」
「来い」
夜トはあたしを見るわけでもなく、一言そう言った。
「え⁈何処行くのよ!」
あたしはそう言って夜トの後を追いかけた。