ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜
□ツナグモノ
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「あっ!目が覚めたみたい!白りん大丈夫?」
「小福さん…。あたし…?」
目が覚めると其処には小福さんの心配する顏があった。
「死神と闘りあった後、アンタ意識失ったのよ。覚えてない?」
「剛ちゃん…。」
あたしは朦朧としながらも、少しずつ意識がハッキリするのが分かった。
ここは小福さんの家。
あたしは意識を失ってここに運び込まれたのだ。
周りを見渡すと皆、心配そうに集まっていた。
「小福さん…剛ちゃん…あたし…」
「全て思い出したんだろ?」
そう言って少し離れた所から夜トが話した。
「…泣く程辛い過去かよ」
そう言われてあたしは自分が泣いていた事に気がついた。
「夜ト…ごめん。」
「はあーっ?なんでオマエが謝るんだよ⁈どーせ、んなことだろうと大体予想ついてたっつーの!」
何故か夜トはイライラした様子だった。
「ちょっと、夜ト!病人に当たらないの!」
「剛ちゃん、いいの。皆に迷惑かけちゃったし。…あたし、全部思い出したから。皆に話す」
あたしは思い出した事全てを一つ一つ、皆に話した。
「…死神からプロポーズとは、アンタ中々やるわね。」
全て話し終えた後、何故か剛音は顏を赤らめて恋する乙女の様な表情になっていた。
「オマエ、恋愛相談所じゃねーんだ!喜んでんじゃねーよ!!」
「だって愛する者の為に自分が身代わりに消えたのよ⁈そこに愛を感じるわぁ〜☆」
「愛とかワケわかんねぇコト言ってんじゃねーよ!大体死神が人間と結ばれるワケねーだろがっ」
夜トはかなりイラついているようだった。
「夜ト、何怒ってんの?…もしかして妬いてんのっ⁈」
剛音は火に油を注ぐかの如く、夜トをからかった。
「ばっ…ちげーよ!そんなんじゃねぇっての!!オマエらはアイツの事、知らなさすぎんだよ!」
「それってどういう事よ?」
夜トは少し考え込んで真顏で話し始めた。
「剛音、アイツ(死神)と闘りあった時、般若の面斬ったの覚えてるか?」
「え?うん」
「ありゃ、アイツの神器だ」
え…
「えええええぇ‼あたっ…あたし神器っ、殺しっ…‼」
「それだけじゃねぇ、アイツが操ってた黒い子供の影、ありゃ餓鬼っつって、アレも神器だ」
剛音の顏は真っ青になって、今にも倒れそうだ。
「でも心配すんな。神器っつってもお前らとは全然ちげーよ」
「ど…どういう事よ…?」
「普通は神が死霊に名前をつけて神器にするだろ?アイツの神器には名前がねぇ」
あたしと剛音は夜トの話をじっと聞いた。
「アイツが操る餓鬼共、面、髪、顏、着物…アイツを形作る全てのモノはアイツ自身が連れてった人間だ。
ようするに、アイツ自身は
ただの闇だ。」
あたしは頭が真っ白になっていた。
「で…でも!夜叉には故郷があるって…!」
「ああー?んなもん、死神にあるわきゃねーだろ。ただの闇だぜ?アイツが連れてくってのは、奴の中(闇)に取り込むって事なの。大方、取り込んだ奴の記憶がアイツん中でごっちゃになってるだけだろ。だから悪趣味だっつってんの!」
「夜トちゃん!そんな言い方!」
さすがの小福さんも夜トの言い方には引っ掛かったみたいだった。
「どんな言い方したって一緒だろ。…死神は神の中でもかなり特殊だ。人の死に対する恐れ、絶望、嫌悪から奴は産まれたんだ」
私はどういう見目かは自分自身分からないのだよ。
あたしは夜叉のその言葉を思い出していた。