ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜

□気持ち
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「わぁっ…!」


今は夜の8時位。
まだ街には沢山の人が行きかっていた。


会社帰りの人、男女のグループ、友達同志やカップル。

お店だって今の時間はまだあいている。


あたしは見る物全てに心を奪われた。


「…嬉しそうだな」


夜叉がポツリと言った。


「そりゃ…!だって、夜出歩いた事なんて一回もないもん!すごい楽しい!」


あたしは気になったお店は全て入って行った。

ショッピング、映画館、ゲームセンター…

全てが新しく、そして楽しくて仕方がなかった。

はしゃぎまくってるあたしに夜叉は嫌な顏ひとつせず、ずっと付き合ってくれた。




「しかし…此岸はすごいものだな」


「えっ?此岸?」


「あ、いや…。此岸とは所謂この世の事よ。私は夜しか出歩く事がないのでな。といってもほとんど出歩く事がない。こういう女子(おなご)と2人というものも初めてなのだよ。」


そう言って夜叉は少し照れたように笑った。



「あ、あたしも男の人と2人でデートなんて初めてだよ!」




はっ…




でっ…デート!!


あたしは自分で言ってかなり恥ずかしくなっていた。



「デート?デートとは何ぞ?」


「なっ、何でもないっ!」



あたしは顏を真っ赤にして夜叉に背を向けた。







その時






あたしの手を夜叉が優しく取った。



「そなたの喜ぶ顏が見れて、私も嬉しいぞ」









その一言で確信した。





あたしは





あたしはいつの間にか夜叉の事を好きになってしまっていた。
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