ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜
□気持ち
1ページ/2ページ
「わぁっ…!」
今は夜の8時位。
まだ街には沢山の人が行きかっていた。
会社帰りの人、男女のグループ、友達同志やカップル。
お店だって今の時間はまだあいている。
あたしは見る物全てに心を奪われた。
「…嬉しそうだな」
夜叉がポツリと言った。
「そりゃ…!だって、夜出歩いた事なんて一回もないもん!すごい楽しい!」
あたしは気になったお店は全て入って行った。
ショッピング、映画館、ゲームセンター…
全てが新しく、そして楽しくて仕方がなかった。
はしゃぎまくってるあたしに夜叉は嫌な顏ひとつせず、ずっと付き合ってくれた。
「しかし…此岸はすごいものだな」
「えっ?此岸?」
「あ、いや…。此岸とは所謂この世の事よ。私は夜しか出歩く事がないのでな。といってもほとんど出歩く事がない。こういう女子(おなご)と2人というものも初めてなのだよ。」
そう言って夜叉は少し照れたように笑った。
「あ、あたしも男の人と2人でデートなんて初めてだよ!」
はっ…
でっ…デート!!
あたしは自分で言ってかなり恥ずかしくなっていた。
「デート?デートとは何ぞ?」
「なっ、何でもないっ!」
あたしは顏を真っ赤にして夜叉に背を向けた。
その時
あたしの手を夜叉が優しく取った。
「そなたの喜ぶ顏が見れて、私も嬉しいぞ」
その一言で確信した。
あたしは
あたしはいつの間にか夜叉の事を好きになってしまっていた。