ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜

□白檀の香
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「…剛、白、戻れ」


夜トに言われて剛ちゃんとあたしは人の姿に戻った。

あたしは思わず地面に座りこんだ。


「ち…チョットぉ!アイツ誰⁉何者よぉ⁉夜ト、アイツの事神とか言ってなかった⁈」


剛ちゃんもかなり動揺していたようだった。


それもそのハズだ。

神と神が闘うなんて、あたし達神器もさすがに思ってもみなかった。



「…アイツは夜叉神。いわゆる死神だ」


「し、死神いっ⁈」


剛ちゃんは思わず声を上げた。



「死神って…なんでそんなヤツがあたし達を襲うワケ⁉」



「それは…」



夜トはそう言ってあたしを見た。



ドキっ…



あたしは思わず夜トから目を逸らしてしまった。



「白音…。お前、生きてた頃にアイツと会ってるだろ」



「…!」



「どういう事よっ⁉夜ト!」




「白音は、夜叉神が連れて行くはずだったエモノ(人間)だよ」






…そう、あたしは死神に連れて行かれる人間だった。



夜トの言葉で、今まで朧気だった記憶が



今、少しずつ




鮮明に蘇る。




ずっと霧に隠れていたモノが少しずつ晴れるように。





でも





夜トや剛音は知らない。





知るはずもない。





…あたしはあの人を愛していた。







死神なのに。








そして、彼もあたしを愛してくれたんだ。
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