ノラガミ 〜 桜の咲く頃に 〜
□来襲
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あたしは校門を出る前に後ろを振り返った。
…何も言葉が出ない。
切ない?
悲しい?
…ううん、もしかしたら心の何処かではホッとしていたのかもしれない。
「よぉ」
校門を出た先に夜トが立っていた。
頭を掻いて何か言いたそうに横を向いて口を尖らせている。
「夜…ト」
「…なんか、分かったのか?」
あたしはその言葉に下を向いた。
「そっか。…帰るか。」
「うん…」
あたしは夜トの後ろに黙ってついて行った。
「白ちゃあん!」
「剛ちゃん…迎えに来てくれたんだ。」
「当たり前じゃなぁい!心配…したのよ。」
「…ありがとう」
あたしは剛ちゃんに笑顔で答えた。
夜トも剛ちゃんも心配して迎えに来てくれたんだ。
…これ以上、2人に心配かけたくなかった。
「それで…何か分かったの?」
「…載ってなかった。」
「え…?」
「過去5年の卒業アルバムにあたしは載ってなかったの。何回も見て確かめたんだけど…。」
「そう…残念だったわね…」
「でも…。でも、なんだか少しスッキリもしたの。ホッとしたっていうか。結局あたしが誰だか分からなかったんだけどさ。…夜トや小福さんに今、あたしは白音なんだって言われて…過去がどーでもいいとかじゃなくて、今を大切にしなきゃって、なんか思えたんだよね!」
「白ちゃん…」
「だから、過去はもう思い出さなくてもいいかな。」
う…ら…ぎるのか…?
お前は私を…
「⁈誰!」
ボコっ…
その声が聞こえたかと思えば、あたしは足首を誰かに掴まれた。
地面から黒い…子供の手。
「きゃああああっ!」
「白ちゃん‼」
「白音‼…ちっ!」
「来い‼剛器‼白器‼」
ドクンっ…
あたしは胸が熱くなるのを感じた。
…そして次の瞬間、あたしは夜トの首に巻きついていた。
(や、夜トっ!)
「…出来ればお前をこーいう場面に出したくなかったがな。まぁ、しょーがねぇ。…来るぞ。」
そう言って夜トは下を指で差した。
ボコボコボコ…‼
辺りは一面真っ黒な子供の妖がいた。子供の影の様な妖といったほうがいいかもしれない。
(ひいいいっ‼夜トぉ!こいつら何ぃっ!)
「うるせぇ!しゃべってっと舌噛むぞ‼剛器!行くぞ!」
そう言って夜トは剛器を振り上げた。
その瞬間
ぎゃああああっ!
妖の悲鳴が聞こえた。
たった一振りで一面にいた妖が一瞬で消えたのだ。
赤くて、夜トの背程ありそうな長い劔。
(これが剛器…すごい…)
あたしは剛器の威力に言葉を失っていた。
「あっちぃ!剛器、おめ、あちぃんだよ‼」
(だから、あたしを使うのは大変って言ったでしょ☆あたしをそこら辺のコ(神器)と一緒にしないでよねっ♩」
どうやら、剛器の破壊力は凄まじい反面、柄の部分は熱を持つらしい。
「ヤケドしたらどうしてくれんだ‼」
(あら、あたしは一筋縄ではいかない熱い女なのよ☆)
「…折るか(小声)」
そんな下らないやり取りをしているうちに、次の妖がまた地面から出てきては、あたし達に襲いかかってきた。
「…ちっ!」
夜トが地面から出る妖を一掃しても、また出る妖に襲われるのを繰り返し。
「これじゃ、拉致があかねぇ‼どっかにこいつらの親玉がいるはずだ!」
(親玉っ⁉親玉って…)
チリン…
鈴の音…
!!
(夜ト!後ろっ!)
ガキィッ‼
刃が激しく重なる音が辺りに鳴り響く。
「…出やがったな、親玉がぁ!」
白い着物。
白くて長い髪。
顔には般若の面。
そして、白檀のほのかな香り。