デュラララ!

□気になる彼は職人気質
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-一度失ったから次は大事にしようとするんだよ-


「かーどた君!」
明るい声質でニット帽の男に声をかけたのは、いかにもカタギの人間ではない人物だった。
「うわっ・・・こんなとこで何してるんですか?」
現在地は、門田が依頼を受けた公共施設の一角。仕事中は誰も入れないように担当者に声をかけたことで人声に驚いてしまった。
「門田くんが仕事でいないって聞いて、すぐ見に来ちゃったよ」甘えたような声を出す大柄な男赤林を呆れたように門田は見つめた。
「それにしても、なんでおいちゃん呼んでくれなかったの?」

「呼んでも構う暇がないですし、つまらないかなって」
そもそも最初から呼ぼうとなど思っていなかったが適当に理由をつける。

「優し過ぎるよ、京平。壊したくなるほど・・・」
口調はいつも通り優しいが、漂う雰囲気は違う。獲物を見るハンターのような。
このままではいけないと思ってか門田は話を無理やり変えた。
「そ、それにしても、どこから入ったんですか?」

「ここは同僚のゴリラさんのシマ・・つまり、粟楠会のシマなんだよ」
いつもの調子に戻る赤林にほっとした同時に恐ろしくも感じた。
一瞬にして、獣ように変貌する赤林。それを見て恐れを感じないのだとしたら、壊れているとしかいえないだろう。

「そうなんですか。赤林さん待たせるのも悪いので、仕事早めに終わらせます」
そう言うと門田は作業に集中した。無言なので当然その空間は静かなものだ。門田は赤林の存在を忘れるほど、気配もなかった。













「ふぅ・・・」
終わると一息ついた。そして、思い出したかのように赤林を探し声をかけようとする。そこで、門田が疑問に思ったのは 「あれ?赤林さんがいない」
だった。待たせすぎたのかと時間を見ると何時の間にか9時を回っていた。
仕方ないなと思っても門田は少し寂しかった。


汗でべとべとした服を早く着替えたくて少し早足で歩く。


そんな時、後ろから突然手を伸ばされ目を塞がれる。

「ッ!」

「ダーレダ?」
声質、手の肌質、匂い、背後から感じるガタいすべてを門田が頭の中で検索をかけた結果、

「赤林さん?」

その言葉を発すると手による拘束は解けた。

「悪ふざけも大概にして下さいよ!」
あれ?と疑問符を浮かばせつつ赤林は考える。
「どうしたの?門田くん」

「赤林さんがいないと胸が苦しくなって、
いるといるで苦しいんです!」
黙って沈黙を続ける赤林は表現を見る見る真剣にさせる。

「なんとかして下さいよ・・・」


「ごめんね。おいちゃんのせいで」
風貌には似合わなく、薄く涙を浮かべる。それを気遣うように謝る赤林に心が更に痛む。
「謝らないで下さい!俺の訳の分からない気持ちをあなたに一方的に伝えてしまって」
色眼鏡を外し、しっかり門田を見据える。
そして、門田を抱き寄せ、耳の近くで語りかける。
「俺の気持ちも伝えればいいよな。京平・・・・・好きだ」

一瞬にして門田は高揚し、顔は赤く染め上げていく。

「じ、冗談を・・・」

「本気だ。お前は俺のこと嫌いか?」
勿論答えは決まっていた。だが、それには心の準備を必要とした。
「・・・嫌いではないです」

「好きか?」
間髪入れずに問いをする。

「・・・…ス、、きです」
正直になれと思っていても体はうまく動いてくれなかった。
「気持ちは分かったから、少しずつでいいよ門田くん」


そして、額に触れるだけのキスをした。
「ちょっ!何してるんですか」

「ん?おやすみのキス」



「門田くんがおいちゃんのものだっていう印だよ」
門田の表情を見て面白がってはいたが、心中穏やかではなかった。






(門田くんと///焦らない、焦らない。少しずつだね)

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