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□本当はね
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「俺、柳生のこと
好きでいるのやめる」

「は?」

「もう、辛いから
好きでいるの…もう嫌じゃ」



そう言って仁王は笑った





元々応援するつもりはなかった

けど、仁王の笑顔が見たくて
俺は良い人ぶって
仁王の一番の味方でいた

いや、いたかったんだ

きっと、いつか
自分を見てくれるから

そう信じてた



そしたらこんな奇跡が
舞い込んできて

神の子なんて言われてる俺でも
神様にありがとうなんて
思っちゃってさ




「じゃあさ、仁王は
どうしてそんな顔してるの?」

「そんな顔…って…?」



俺は君が好きだ



「泣いてる」

「嘘だ」

「嘘じゃないよ、ほら」


俺は仁王の頬に伝う雫を
丁寧に舐め上げた


「…なんで…そんなことするん」

「仁王が好きだから」




俺は君が大好きだ

だから





「泣いては欲しくない」


俺は君を笑顔にできても
幸せには出来ないんだよ


「行っておいで
返事はいらないから」



本当はわかってたんだ

君が僕のものなんかに
ならないって



チャンスなんて
無かったんだ




「幸村…」


君はアイツを好きだから
綺麗だったんだろうね


「ありがとう」






閉まる扉に手を伸ばしても
何かが変わるなんて

俺には思えない

(初めからおしまいだった小さなお話)



 

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