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□別に
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「…仁王、何してんの?」

「…」

今日は珍しく部活が休みで
放課後たまたま教室に残ってた
仁王と帰ることになった

だが、仁王は急に
廊下の真ん中で立ち止まって
しゃがみ込んだ


「そこ、通行の邪魔だから
どけって、な?」

「…」

「…ったく」


たまに仁王は
こういうことがあるから
厄介だと俺は思う

詐欺を使って居るときはいい
悪戯や悪行という言葉で
片付けられるが

こういった素で
意味のわからない行動をされると
こっちもたまったもんじゃない 

しかも、それが無自覚なのが
余計に質が悪い



「いいから、帰んぞ」

俺は半ば強引に仁王を立たせた

当の本人はまだ
座り込んでいたところに
目線を置いて動こうとしない


「ブンちゃん…」

「ん?何?」

「あそこ、よう見て」


そう言って仁王が
指差した場所には
有り得ないことに
蛹があったのだ

本当に有り得なさすぎる


「なんで廊下にあるんだよ…」

俺たちはもう一度
その場に戻ってみた

「誰かがふざけて
取ってきたんかのぅ?」

そう言って仁王は
それを拾い上げて
窓に近付いた


「ブンちゃんだったらどうする?」

「そのままそこから投げる」

「じゃあ、俺は落とそうかのぅ」


それからあっという間に
仁王は窓を開けて
そこから手を出して
蛹を落とした


「死んだかのぅ…」

そして、そこから
顔を出して下を見つめる

いったい何がしたいんだか


「お前、惨いな」

「…別に」





仁王は笑った

でも、それは俺の中で
見なかったことにしておこう




(ブンちゃん、明日も一緒に帰ろ)(やだ)


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