こんな気持ち初めてだから
どうしようもなかった

人を騙すのが得意なはずなのに

自分が騙されている気分で





「のぅ、やぎゅ」

「なんですか?」

「俺んこと、好き?」

「ええ、とっても」



いつだってそう

こいつはいつも
ヘラヘラ笑いやがる



「俺はお前さんのこと嫌いじゃよ」

本当はそんなこと
微塵も思ってないのに

「そうですか、ありがとうございます」

どうしていつも
こんなふうに笑ってくれるのだろう

俺の本心がわかってるみたいな
顔をしてる




柳生は狡い




「…柳生には嘘は効かんの?」

「それは貴方次第ですよ」

「はぁ?」

「ですから、貴方が
私に対する嘘の付き方を
努力するかしないかによって
それは大きく変わりますから」


言っとる意味がわからん

俺がそう口にしようとした瞬間
柳生は俺の頬を撫でた



「だって、貴方の顔に
全て書いてありますから」





つまり、だ

柳生の前では全て
表情に表れてしまうらしい




「…わからん」

「私はわかりますよ」

「柳生は嫌い」

「顔には好きと書いてます」

「…じゃあ、好き」

「…!ありがとうございます」