長編

□(得たものは果たして)
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「………な…っ!?」


話を聞き終えたククールは愕然として、そんなことが…と呟いた。
ベッドを思い切り拳で殴りつけ、ギリ…と歯を食いしばる。


「…兄様……私は大丈夫です。私がしっかりしていれば…。」

「バカ野郎!!悪くねえ……お前は何も悪いところなんかねえよ…。
……気付けなかった俺が、悪かった…!許してくれ、名無しさん…。」


目の前が赤で覆い尽くされる。ククールがしっかり抱き締めていた。
名無しさんの瞳から綺麗な雫が、ポロポロととめどなく落ちていく。



「(俺は神様なんて信じねえ……から、オディロ院長に祈っとこう。
院長…この健気で強い妹を、どうか…どうか、守ってやって下さい…!)」



彼女の首にかかっているロザリオが、キラリと美しい光を放っていた。

























西の大陸にあるカジノで有名な街、ベルガラック。
そこのオーナーが1人の道化師に殺され、2人の養子が仇討ちのため追っ手を放った。


場所はベルガラックの北の島、闇の遺跡がある場所らしい。



「嫌な空気だわ…肌がピリピリする。」

「あれが例の追っ手でがすな。」

「何というかまあ……すぐやられそうだよな。」

「中に入ったら危ないですね。私たちが先に倒さないと…。」


薄気味悪い魔物たちを倒しながら、一行は遺跡の入り口に向かう。
闇の魔力で覆われたそこに、ゆっくりと進んでいく杖を持った男がいた。


『!!!』


ドルマゲスだ。そう確信すると同時に彼はこちらを向き、ニヤリと笑いながら消えていく。
だが今回は様子が変だ。どこか疲弊しているようにも見えた。


「…よく分からないけど、これはチャンスだ。」


ゴクリと喉を鳴らしたエイトを筆頭に、急いで彼らも遺跡に入る。


「暗いでがすね…。」

「名無しさん、何か周りの様子とか見えるかしら?」

「……………。」


千里眼を駆使しても何も見えない。ただ真っ暗な空間が広がっているだけ。
神に祈りを捧げてみても、不可解なことに何かに遮られてしまった。



「…ううん、何も………。」

「進んでいけばいつか辿り着くんじゃないか?せっかくここまで…うおっ!?」

「あわわっ!?」

「な、何でがすか!?」

「きゃっ!?ちょ、ちょっと!?」

「走って!!早くっ!!」


急に皆の腕を掴んで走り出した名無しさんに、転びそうになりながら4人も走る。
ドルマゲスの高笑いを聞きながら、遺跡の外で一行は荒い呼吸を繰り返した。


「はあ…はあ…っ!」

「ど、どうしたんだよ、名無しさん…?」

「そうよ…!何で突然…?」

「お…おびただしい数の亡霊が、襲いかかる直前だったの…。
あのままだと私たち全員、抵抗も出来ずに骨まで食べられてたわ…!」

「げげっ!?ほ、骨まででげすか!?」


一気に顔を青褪めさせる5人の元へ、例の追っ手たちが心配して近付いてきた。
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