長編

□何千日生きた中の、
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現在名無しさんたちはトロデーン城にいた。というのも……。





『でかいでがすな…この船…!』

『でもここ荒野じゃない。こんな大きな船をどうやって海に…?』


広大な荒野に到着した一行は、情報屋に教えてもらった古代の船を発見した。
だがこの荒野から海に運び出すことは不可能。どうしたものかと考え込む。


『…そうじゃ!ここから北に行くとワシの城がある。
皆の者、そこの図書室から古代の魔法船の情報を見つけるんじゃ!』


そう言ったトロデの言葉に頷き、彼らは北へと歩き始める。
呪われた自分たちの城を思い出しているのか、エイト、トロデ、姫は浮かない顔だった。





「じゃあ案内するよ。図書館は…ここをずっと奥に進んでいった所だから。」


さすが近衛兵だったエイトは、城の複雑な構造に慣れていた。
途中で立ち寄ったのは杖を封印していた場所。何が起こったのかトロデが教えてくれる。



「…城の者を楽しませる道化師ということで、ワシがドルマゲスを呼んでいた。
あの夜、この部屋の見張りが倒れておって…。ワシと姫で上へ向かったんじゃ。」

『……………。』

「奴が杖を手にした途端に顔つきが変わり、ワシは魔物に。姫は馬に変えられて…。
あっという間に城中がイバラに覆われ、この有り様という訳じゃよ。」

「…兄貴は何で無事だったんでげしょうね…?」

「さあ…。」


確かにエイトは魔物との戦いでも、1人呪いを受け付けない。
…謎が残るが今は図書室へ。一行は再び奥へと進んでいった。



「…あった、ここだよ!」

「……頭が痛くなるでがす……。」

「すっげえ本の数だな…。」

「ちょっと…ここから探すって言うの!?大変じゃない!!」


うんざりした表情の3人に構わず、祈るように名無しさんは目を閉じている。
少ししてそっと目を開けた彼女は、最奥にある本棚を指差しながら言った。


「…あそこの本棚、上から4番目にあるわ。“ 荒野に捨てられた船 ”って書いてる。」

「よし、ではじっくり読んでみるとしよう。」

























見つけた本を読みふけっているうちに、気付けば空には満月が昇っていた。
呪いのせいで壁や天井に穴が開き、外の様子がよく見える。


一応他の本も読んだが分かったのは、荒野が昔は海だったということだけだった。



「今現在もあそこが海だったら、何の苦労もなかったのじゃが……ん?」

『…え…!?』



願いの丘と同じように、ドアの形をした影が壁に向かって伸びていく。
呆然と眺めていると光を放ち、まるで彼らを中に誘うようだった。


「……名無しさん、これ…本当にあの月の世界の…?」

「…この中だけは不思議と、私も開けずに見ることは出来ないわ。
でも……行きましょう!きっとあの人…イシュマウリさんがいるはずよ!」



ゴクリと喉を鳴らしたエイトが、月影のドアをそっと開いた。
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