長編

□私の暗いどろどろした瞳を見て
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一行が南に歩いていくと、何やら鼻をつく臭いが漂ってきた。
うっと思わず顔を背ける者ばかりだが、ヤンガスだけは懐かしさに目を輝かせる。


「着いたでがす!ここならトロデのおっさんも、堂々と酒が飲めるでがすよ。」

「確かに…ここの連中はワシを見ても、何も言ってこんな。
となれば早速酒場じゃ!ワシは先に行っておるからな!」

「では僕たちは情報屋に会ってから行きます。」

「うむ。吉報を待っておるぞ。」


ご機嫌な様子で酒場に向かうトロデを見送り、エイトたちは情報屋の元に向かう。
街の中でも一際高い建物の中で、彼はいつも仕事をしているのだとか。


「…くせえ…!」

「が、我慢しましょう、お兄様…。」

「ちょ、名無しさん!?顔が真っ青じゃない!」

「大丈夫…。」

「も、もう少しだよ!何なら酒場で姫様と一緒にいても…。」


心配する仲間たちに何とか笑顔を見せ、それより情報屋にと道を急ぐ。
ようやく着いた。ヤンガスがノックをする。……返事がない。


「…どうやら留守でがすね。」

「無駄足だったわね…。」

「仕方ない…王様の元に戻ろうか。」


眉を下げたまま話し合う3人の側で、ダウンしかけている妹を介抱するククール。


「歩けるか?お前ずっと修道院の中で暮らしてたもんな…。」

「ククールは?」

「俺はドニの酒場とか行ってたし、キツいけど耐えられねえことはない。」

「嬢ちゃん、キツかったらククールの背におぶさるでがすよ。」


仕方ねえ…と言いながらも、ククールは満更でもない様子。


「…よし、行こうか!」


エイトの言葉に名無しさん以外が、コクリと元気よく頷いた。

























「どうして酒を飲むのに、こんなに苦労せねば…!」


酒場の前に置いてけぼりの姫を哀れみつつ、一行は中にいるトロデに報告する。
情報屋が留守だったため、仕方なく戻ってきたのだと。


「そうか…名無しさんはどうしたんじゃ?」

「臭いに耐えられないって、俺の背中でブルブル震えて…。」



突如、酒場の外から聞こえた馬の悲鳴。まさか…と嫌な予感が走る。
走り出す彼らの後ろから店の主人の、お勘定は!?という声が聞こえた気がした。



「た、大変じゃ!!姫が…ミーティアの姿が見当たらん!!」

「…こいつはいけねえ!アッシとしたことが、うっかりしてたでがす。
ここの連中は人の過去や事情には無関心。でも持ち物には興味ありまくりでがすよ!」



その言葉に怒りのオーラを見せるトロデ。しかし遠くには行ってないはずと宥めすかす。
とりあえず街中を探し回るうちに、何やら怪しい部屋を見つけた。


「……998枚、999枚、1000枚っと!オヤジの奴、目が利きやがるぜ。
あの馬の品の良さを一発で見抜くとは、さすがは闇商人ってとこ……っ!?」


姫を売ったらしい男……キントは、一行の姿に驚いて腰を抜かした。


「貴様か!!ワシの可愛い姫をかどわかしたのは貴様なんじゃな!?」

「な、何で魔物がここに…!?許してくれ!!あの馬が魔物の姫なんて知らなかったんだ!!
この通り売った金は返すから、どうか命ばかりは……。」

「売ったじゃと!?ええい、エイト!こんな奴は斬り捨ててしまえ!!」

「まあまあ、落ち着けよおっさん…。」


ヤンガスがトロデを宥めながらも、キントの金を奪い取る。
次は闇商人の所だ。彼らは先程の酒場の主人に金を渡すと、急いで闇商人の元に向かった。
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