長編

□涙と旅立ち
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外の景色は重苦しく、土砂降りの雨が降っている。
神が大粒の涙を流す中、オディロ院長の葬儀が院長室の裏で行われた。



「………今ここに、安らかに眠りたまえ……。」



マルチェロが追悼の言葉を述べ終わるとともに、院長の葬儀は終了した。
悲しみに暮れながら戻る修道士や騎士団員には続かずに、ククールと名無しさんはその場に立ち尽くす。


「「……………。」」

「…あの…。ククール、名無しさん……ごめん。」


何と言葉をかけていいか分からないといったエイトたちだったが、名無しさんがそれを遮った。



「…気にしないで、あなたたちのせいじゃないわ。私が…守れなか、った…から……っ!!
悔しいけど、このことが見えていたのは本当よ…。なのに、なのに私は…!!」

「……泣くな。泣いたって、院長が生き返る訳じゃねえ。…お前のせいじゃないさ。」

「………は、い…!」

「「「「…………。」」」」


涙を拭いながら頷く名無しさんを見て、ククールは視線をエイトたちに戻す。



「あんたらも、巻き込んですまなかったな。
俺たちの部屋の隣は空き部屋だから、今日はそこで休めよ。」

「……何だか、申し訳ないのぉ…。」

「…いいえ、ぜひ泊まっていって下さい。マルチェロ団長もきっと、許可して下さるでしょうから。」

























翌日には雨も上がり、ククールと名無しさんはエイトたちの部屋を訪れた。
すると、ちょうど彼らも目が覚めたところだったらしい。


「…おはよう、2人とも。」

「目が覚めたみたいだな。」

「……オディロ院長の死はあなたたちの責任じゃないわ。
むしろ…みんながいなければ、マルチェロ団長まで死んでいたと思うから。」

「…礼を言う。……ありがとな。」


ドアの前に立ってそう言う2人に、エイトたちは首を横に振った。
そんな彼らを見て、ククールが外に向かって親指を指しながら告げる。



「……さて、その聖堂騎士団長どのがお呼びだ。部屋まで来いとさ。」

「あなたたちの仲間の……緑色の人?もいるから。」

「あ、トロデ王ね。分かった、すぐに行くわ。」


ゼシカの返事を聞いて、ククールと名無しさんは先に団長室へと向かうのであった。





「……さあ、行くよ。ヤンガス、起きて。」

「ちょっと、まだ寝てたの?」

「ふわあぁ………。おはようごぜえやす、兄貴にゼシカの姉ちゃん。」
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