長編
□救出と焦り
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しばらくククールと名無しさんが部屋で休んだり祈ったりしていると、修道士がククールを呼び出した。
「ククールさん、マルチェロ団長がお呼びですよ。拷問室の前にある、尋問室へ来いと。」
「……ああ?面倒くせえ…。」
「…あの人たちが帰ってきたみたいですよ。」
「ああ、なるほど…。仕方ないな、行ってくる。」
彼はそう言って怠そうに体を起こし、尋問室へと向かっていった。
「誰だ?」
「団長殿が俺を呼んだのではないですか?」
「……入れ。」
ククールがドアをノックすると、中からマルチェロの声がしてくる。
少々皮肉めいた声で返事をすると、怒りを抑えているような低い声で許可が下りた。
「(ははーん…。やっぱり見つかってしまったのか、こいつら…。)」
中に入ると、エイト・ヤンガス・ゼシカが助けを求めるようにこちらを見てくる。
すると、マルチェロがククールに、ある物を懐から取り出して見せた。
「院長の部屋に忍び込んだこの者達を捕まえて、荷物を調べたところ、この指輪が出てきた。
……聖堂騎士団員ククール、君の指輪は何処にある?持っているなら見せてくれ。」
睨むような目つきで問いかけてくるマルチェロに、彼は笑いながら指輪を奪い取った。
その途端、マルチェロは憤った様子で椅子から立ち上がるが、知らぬ振りをして口を開く。
「いやあ、まさか団長殿の手に渡っていたとは!酒場でスリに盗まれて困っていたんですよ!」
「何だとっ!?」
彼の言葉にヤンガスが、反論をするために食って掛かる。
「おい、兄ちゃん!そいつは話が違え…!」
「黙りなさいっ!!」
ゼシカが思い切りヤンガスの足を踏みつける。
涙目で悶えている彼には構わずに、ゼシカはマルチェロに弁解する。
「そんな指輪、どうだっていいわ!そもそも、そのケーハク男の言うことを聞いたことが間違っていたのよ!」
「そういうことですので、俺はこれで失礼します。」
そう言うとククールは、待てと止めるマルチェロを無視して尋問室を出ていった。
背後から聞こえる、何やら王のような話し方をする声に耳を傾けながら…………。