長編
□出会いと始まり
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「おい、ククールは?」
「あん?またドニに酒飲みに行っているんじゃないか?」
「またかよ、ったく…!」
「…………。」
ああ、これで何度目だろうか。
団員や修道士の言葉を聞く度に、名無しさんはフウ、とため息を吐く。
「おい、名無しさん!!」
ほら、きた。
「はい、何ですか?」
「団長からの命令だ。お前の兄を連れ戻してこい、ってさ。」
「……分かりました、行ってきます。」
「大変だろうが、頑張れよ。」
先輩騎士団の労いに苦笑しつつ、名無しさんはドニの酒場へと向かった。
一方………。
「おっと、今は真剣勝負の最中でね。後にしてくれないか?」
ワインを片手にポーカーをしている、真っ赤な服に銀髪の男。
そう、彼こそが修道院の問題児と言われている青年、ククールである。
「でも、あの……。」
「真剣勝負だとっ!?てめえ、イカサマやりやがったな!!」
朱色のバンダナを被った青年、エイトの言葉を遮り
ククールとポーカー勝負をしていたあらくれ男が憤る。
「まあまあ、あんたもそう興奮するなよ。」
頬にキズのある体が丸い男、ヤンガスが宥める。
しかしあらくれ男はヤンガスを突き飛ばし、ククールの仲間だと勘違いをしてしまった。
「いい加減にしやがれ!妙な言いがかりをつけると、タダじゃおかねえ…。」
売り言葉に買い言葉。険悪な雰囲気になろうとした時、突然2人に水がかけられる。
髪をツインテールにした少女、ゼシカがかけたものであった。
「頭を冷やしなさいよ、この単細胞!!」