長編

□私の暗いどろどろした瞳を見て
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中に入ると遥か遠くに見える大きな宝箱。ヤンガスがそれを指して話す。


「あの宝箱にビーナスの涙って宝石が、隠されてるって話でがす。
アッシも以前挑戦した時は、あそこまで辿り着けなかったんでがすよ。」

「何というか、まあ……罠が仕掛けられてそうだよな…。」

「…その考えは当たってるかもしれませんね。」


ゲッソリとした顔のククールに、名無しさんも笑顔を引きつらせて賛同した。
しかし諦める気は毛頭ない。幽霊系統の魔物を倒していきながら、確実に進んでいく。


「うーん……確かこっちのドアだったでがす。」

「そっちは違うわ。押し返されて穴に落ちちゃう。」



「この宝箱…どっちも取って大丈夫かしら?」

「大丈夫なのは右側だけね……左は魔物が化けてるわ。」



「この像はどうしたらいいんだろう?」

「天井に開いてる穴を見て。縦と横が交わった所に立つと上に行けるから。」

「……名無しさん、お前すげえな……。」



奇妙な仕掛けも何のその。名無しさんの千里眼がこれ程まで役立つとは。
とうとう目的の大きな宝箱に辿り着く。その前に…と右側の碑文を読むと、体力が回復した。


「…戦う準備はいい?」

『え?』

「この宝箱…中身は魔物だから…っ!?」



そう言いかけた瞬間に姿を現した、トラップボックスという魔物。
両腕と足元を宝箱に模しており、かなり強い力で挟みながら攻撃してくる。


「ククールと名無しさんはスクルト!ゼシカはバイキルトお願い!
ヤンガスと僕がテンション溜めて攻撃するよ!!」

「合点でがす!!」

『!!!』


一気に体力を削られるものの、すかさず回復を重ねていく兄妹。
余裕があれば攻撃しながら、着実に相手の体力を減らしていくのみ。



「これで終わりだ!!」



エイトのはやぶさ斬りを最後に、魔物は大声で叫びながら消えていく。
残ったビーナスの涙を手にした彼らは、ゼシカのリレミトで洞窟を出た。


「やったでがす!!ビーナスの涙を手に入れたでがすよ!!」

「よし、ゲルダさんの所へ戻ろう!早く姫を…!」

「あ、ちょっと待って!」


慌てて引き止める名無しさんを振り返り、不思議そうな顔をしている4人。


「回復するから。小さな傷でも悪化すると大変だからね。」

「そ、そうだったわ…。ありがと、名無しさん!」

「どういたしまして!」


優しい光で仲間たちを癒してやり、ニッコリと笑顔を向ける名無しさん。
するとグイと右腕が引っ張られ、横を見るとククールが呆れ顔で手をかざしていた。


「…うちのお姫様は人の怪我には敏感で、自分の怪我には鈍いからなあ…。」

「あ……。」


牙が掠った時に出来た傷が、ククールのべホイミで癒えていく。
やれやれと肩を竦めながらも、彼は優しく妹の頭をなでてやった。



「…さて、行こうか!!」


早く姫を取り戻さなくては。一行は急いでゲルダの家へと向かった。
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