犬夜叉
□第一話
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「……♪」
森の中に、綺麗な鼻歌が響く。
戦国時代にはありえないセーラー服を身にまとった、日暮かごめが歌っている。
「かごめー! このぐらいでよいのか?」
「うん、ありがとう七宝ちゃん!」
かごめとその仲間である七宝は森の中で、草を集めていた。
適当に集めて、後で楓や冥加じいにみてもらおうというところだろう。
「それじゃ、帰ろっか」
「おう!」
かごめと七宝は、仲のよい姉弟のように、手を繋ながら村へと帰っていった。
「ほう…これは障気によく効く薬草じゃ」
「へぇーー…」
薬草を集めていた頃の明るさからは一転し、今は外は真っ暗だ。
楓の小屋の中で、食事を作りながら、かごめと楓、そして話してはいないが、弥勒、珊瑚、七宝もいる。
弥勒と珊瑚もまた、かごめの仲間だ。
かごめは楓から、昼に集めた薬草の効力を聞いていた。
「だが、どれも調理すれば美味しく食せる」
「そうなのか?! かごめ、早速作ろう!!」
七宝が集めた薬草の全てを、つくっている途中の鍋にいれてしまう。
「これ七宝! まだ全て見てない…まあ、よいか」
「おぉーー! いい匂いじゃのう!!」
数分後には、部屋の中には鍋の匂いが充満していて、その匂いに釣られてか、一人の青年が小屋に入ってくる。
「おう犬夜叉。帰ってきましたか」
「犬夜叉!? そうか…今日はあの日だったか……」
「ああ……」
犬夜叉と呼ばれた、黒髪に赤い衣を纏った青年。
どこからどうみてもただの人だ。
それもそうだろう、今日は月に一度の朔の日だからだ。
犬夜叉が人間になってしまう…。
いつもは元気のいい犬夜叉だが、人になっているためか、端から見れば落ち込んでるようだ。
「犬夜叉……そうだ! これ食べて! 今できたばっかりの鍋よ?」
「なんでい、こんなもん…」
そんな犬夜叉を心配してか、かごめがさっきの鍋をよそって渡す。
文句をたらたらと言っていた犬夜叉だが、かごめの優しさを無駄にはできないのか、一口食べる。
「どう? 美味しい??」
「おう! なかなかいけんじゃねぇか! 特にこの草が……なっ!?」
犬夜叉が一際美味しいと感じた草を箸でつまみ上げる。
すると、犬夜叉の体が光り出す。
「「「犬夜叉!!?」」」
それに即座に反応した、楓以外ののメンバーは、犬夜叉の衣をギュッと掴む。
「ぅぅ……。……!? い、犬夜叉!かごめ?! 一体どこへ……」
眩しさに目を瞑っていた楓が目を開けると、そこには誰も残っていなかった。
犬夜叉のいたところにはただ一つ…食べていた鍋のお椀だけが、中身を撒き散らしながら転がっていた。