REVE〜レーヴ〜
□第一章
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桜の花びらがひとひら落ちた。
――わぁ〜桜が咲いてるよ、お兄ちゃんっ!綺麗だね!
あの日のことを思い出すだけで、胸が苦しくなってしまう。今日と同じように桜の花びらが落ちていた、あの日を河野惠一(こうのけいいち)は思い出していた。
彼女の言葉。彼女の夢。それを彼は奪ってしまった。
彼女の思い。彼女の祈り。彼女の人生。彼女の命。それを彼は奪ってしまった。
花びらが、またひとひら落ちた。
「そこの男子、話があるの。時間大丈夫?」
背中から声がした。
惠一はその声を聞き、どうしてかあの日のことを思い出していた。夢をなくしたあの日を思い出していた。
声に反応して、惠一は振り返ろうとした。だが、それに彼女は、
「貴方、私が誰かわかっているの?私が誰か分からずに私を見たら、貴方、消されるわよ?」
その声はすごく澄んでいた。
消される。
そう彼女は言った。