REVE〜レーヴ〜

□プロローグ
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――私はあなたが必要だよ。
 かすれた声で彼女は言った。彼はその一言で生きる意味を見つけられた。
 雪。この街では今雪が降っている。今は、寒い寒い冬だった。
 冬になれば街一面が真っ白に染まる。どんなに苦しくて、悲しくて、辛くて、忘れてしまいたいことでも、雪は一瞬で凍りつかせる。現実とはいつもそんな残酷なことで満ち溢れているのだ。
「そっか…ありがとな…」
 彼はそれしか答えられなかった。
 彼はため息をついた。白い、息が出た。それはまるで今は冬だと伝えているようだった。
 自分が必要、か。
 彼女はいつでも完璧でいた。それなのに彼女は自分が必要だという。なんて馬鹿げているのだろう。
「あ…」
 明日時間あるか、と彼は言おうとした。だけど、
「あのさ…惠一、私と付き合ってくださいっ」
 それを遮り彼女はそう言った。
 とっさのことで、彼は反応できなかった。
「えっ」
「な、なんてね……また明日、惠一…」
 それが彼が聞き取れた彼女の最期の言葉だった――はずなのに。

 彼女が横断歩道を渡った瞬間に車が突っ込んできた。

 それを見た彼女はとっさに何かを呟いた。

 しかし、彼には聞き取れなかった。


 その日、彼女は、死んだ――


 
 

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