平助の母親
□114.
2ページ/4ページ
かぁちゃんたちと退場したあと、オレと千鶴は式場の人に連れられて、さっき式が始まる前に土方先生と通った教会の脇道を進んで、奥の扉の両脇に立つように指示されて、カゴを手渡された。
「わぁ!きれい!!」
カゴの中身を見て千鶴が声をあげる。
カゴの中には式場に敷き詰められていた花と同じ、白と水色の花がたくさん入ってて、それに混じってふわふわの白い羽も入ってた。
「天使の羽根みたいだね」
ふわふわの羽を一つつまんで千鶴が微笑むと扉が開いて中から校長先生が出てきた。
「おぉ!平助くん!」
「のわっ!ビビったぁ!」
「あっはは、何そんなに驚いてるのさ。それ配るためにそこにいるんでしょ?」
扉が開くの当然でしょ?と鼻歌交じりに千鶴のカゴから一握り中身を持って教会の裏へと歩いて行く。
そんな沖田のご機嫌ぶりを見て、
「…あいつ、あの手の中になんか仕込んでたりしねぇよな…。」
「生卵とかな…」
「えっ!??」
オレのカゴから花を掴んだ左之さんと新八さんがすっげぇ不吉なことを呟く。
「ちょちょっと!それマジでやばいって!左之さん確認してよっ!」
あいつならやりかねねぇって!と懇願すると、「確かにな」と言って急いで沖田の元へと走って行ってくれた。
もぉさー、ほんと頼むよ。
沖田の笑顔はほんと何があるか予測不能だからマジ勘弁なんだって…。
はぁっとため息をつきつつ、式場から全員が教会の裏へ移動し終わると、カゴに残った花を持って俺たちも移動した。
移動した先は、教会からなだらかに下った丘になっていて、少し見上げると真っ白な教会の壁が眩しくて、そのてっぺんにもやっぱり真っ白な十字架が立っていて、真っ青なグアムの青空と真っ白な十字架がすげえくっきり印象的。
教会を背にして振り返れば南国の海がどこまでも広がってて、ほんと、土方先生やるなぁって感心する。
なんで土方先生やるなぁって思うのか全然意味わかんねぇけど、なんか、
土方先生やるなぁ〜
なんだよな。
そんな風に思ってると突然でっかい鐘の音がなってハッとする。
「おめでとうー!」
「苗字さん!おめでとう!」
「苗字!綺麗だぜ!」
「名前ちゃん!俺と結婚してくれ〜!」
たくさんの祝福の声と共に白と水色の花が浅葱色の空を舞う。
花と一緒に舞い上がった羽もあとから後からゆっくりひらひら舞い降りる。
「すげぇ…、ほんとに天使の羽根みてぇだ…」
掛け声が全部かぁちゃんに向けられてることに若干引きつった笑顔の土方先生だったけど、かぁちゃんはほんとに幸せいっぱいの笑顔で、自分の親なのに、すげぇキレイで可愛いと思った。
そんなかぁちゃんが、オレはやっぱり大好きで、
かぁちゃんが幸せで嬉しそうに笑っててくれるのがオレにとってもすげぇ嬉しくてなんつーか…。
「平助くん…?」
そんなオレの顔を横から千鶴が覗き込んで小さい声で呟く。
「へへっ…、なんか眩しくて涙出てきた」
ぐしっと目尻に滲んだ涙を擦ると千鶴もにっこり笑った瞳をキラッと光らせる。
「ふふ…、ほんとだね。眩しくてキレイで…、涙が出ちゃうね」
そう言ってオレの左手をキュッと握った。