平助の母親
□113.
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☆★かぁちゃんの結婚式★☆
かぁちゃんの結婚式。
まさか自分の親の花嫁姿を見るなんて今まで生きてきた中で考えてもみなかったけど…。
いざ話が決まって結婚式挙げるって聞かされた時は、正直マジかよ。って思った。
だって、かぁちゃ んがめかしこんで純白のウェディングドレス着て教会の真ん中で土方先生とその…、
き……、
………、
キス…?
…とか?
〜〜〜〜!!!
なっ、なんかそんなのありえねぇっつーか見てらんねぇっつーか!?
オレもーマジムリだよ!
考えただけでありえねぇのにっ!
そんな風に思って過ごした数週間…。
ついにその日はやってきてしまった…。
ホテルの敷地内に建てられた小さな教会。
両サイドには関係者が座る長椅子がたくさん並んでて入り口からまっすぐ伸びる真ん中はガラス張りになってて下に水が流れるのが見える通路。後から千鶴に教えてもらったけど、通路じゃなくってヴァージンロードっていうらしい。
そのヴァージンロードには白と水色で統一されたたくさんの花が敷き詰められてて、教会に入った瞬間に息が止まるくらい綺麗だと思った。
多分いろいろ話し合ってかぁちゃんと土方先生で色とか決めたんだろうけど、
こういう通路ってだいたい赤が当たり前だと思ってたから、そういう意味でも驚いたけど、
なんか…。
教会の中全体が白と水色と水の透明感ってゆうか清潔感ってゆうか…、
なんかスゲー清々しい爽やかな感じがして、
なんか、ほんと土方先生スゲーなって思う。
多分かぁちゃんもプラン立てたとは思うけど、なんかやっぱり土方先生なんだなって思っちまう。
式場関係者の人に後で左側の長椅子の一番前に座るように指示されて、とりあえず教会の外で待機する。
そうしているとホテルの方から続々とスーツを着た集団がこっちに向かって来た。
「おはよ、平助くん、昨日はよく眠れた?」
一番乗りは沖田総司と校長先生。
その後ろには斎藤先生。
「よく眠れたって…、別にふつーだけど?」
聞かれたことの意味はわかんなかったけど、まぁただの挨拶だと思ってふつーに答えた。
「そ。なら良かった」
にっこりといつもの笑顔を見せて教会の中に入って行く沖田の後に続いて校長先生もにっこり笑って「平助くん、頼んだぞ!」なんて言いながらオレの肩をバンっと叩いて中に入って行った。
「っってぇ〜…、何だよもぉ〜…」
叩かれた肩をさすっていると校長先生の後について歩き出した斎藤先生がオレの前で立ち止まったから、なんだと思って顔をあげると、オレの肩にそっと手を置いてジッと真正面から見つめられる。
「………。」
「………、な、…なに?」
「………、」
「(え〜…、なにもー、目で語られてもマジわかんねーし…)」
「……、土方先生と名前さんの人生一度の晴れ舞台…、故に失敗はこの俺が許さん」
「っな!?」
何言うのかと思ったら、目で人殺せるんじゃないかってくらい鋭い眼光で睨まれた。
斎藤先生マジ半端ねぇ…。
「よぉ〜、へースケー!そんなとこで何青褪めてんだよ」
「ぅ…、あ…、左之さん…」
片手を上げて笑いながら登場した左之さんに続いて、昨日左之さんに紹介してもらった筋肉マッチョの新八さんも笑ってやって来た。
「どぉーした平助!もー緊張してんのかぁ?」
新八さんはめっちゃフレンドリーな大人で初対面なのに超絡んで来る。
だけどそのおかげで仲良くなるのもめっちゃ早くって、左之さんと初めて会った時と同じように、
「俺の事は新八って呼んでくれよな!」
なんて言って背中をバシッと叩かれた。
左之さんとはまた違う感じのアニキだけど、二人とも一緒にいても気ぃ使うことなくいられるからスゲー良い感じ。
こんな人たちが同じクラスにいたら絶対楽しいに決まってる。
「ちょ…、新八さん、重いってぇ」
俺の肩に腕を乗せて抱え込まれグッと体重をかけられる。
筋肉ばっかだから固くて重てぇんだよ。
「はっはっは!平助、お前ガッチガチだな!せっかくの名前ちゃんの晴れ舞台なんだからしっかりやれよぉ?」
ニヤニヤしながらオレの頬をツンツン突ついてくる新八さん。
「いていて、いてぇよ。…しっかりやれよって何だよ?」
肩に乗せられた腕からすり抜けて振り向いて聞けば、左之さんも新八さんも一瞬キョトンと目を丸くする。
「何をって、お前、お前がやるんだろ?」
人差し指でオレを指差しながら言う左之さんに、「だから何を?」って聞き返すと、二人揃って顔を見合わせてまたキョトン顔をする。
「お前聞かされてねぇのかよ」
「ま、普通言わなくてもたった一人の肉親なんだから、お前がやるのが当然だよな」
「???」
ため息混じりに言う左之さんとウンウン頷く新八さん。
「なんなのさっきからサー。オレがなんかするって…」
かぁちゃんの結婚式でオレがすることなんてあんのかよ…。
腕組みして二人の顔を見上げると
「そりゃあお前、花嫁のたった一人の肉親なんだから、重大な任務があるだろう?」
「重大な任務?」
「そ。普通は父親がやるやつな。」
「???」
ニヤリと顔を見合わせる二人。
「花嫁と一緒にヴァージンロードを歩いて花婿に託すっつー重大任務」
……………。
「はぁあああああっ!!?」
驚く俺にただいつも通りの笑顔の二人。
「っ……!っ聞いてねぇよー!!!」