平助の母親
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☆★家族の共有体験★☆
学校での土方先生とは、ほんとに一学期の時となんも変わらない感じ。
まぁ、変に意識しておかしくなるのはイヤだと思ってたし、それでいいんだけど…。
だけど少しだけ変わった事が…。
日曜日、
今日もかぁちゃんは土方先生と一緒に帰ってくる。
明日の月曜日は祝日だからきっと土方先生もいつもよりゆっくりしてくんだろうな…。
とか思ってたら22時を過ぎてもなかなか帰る様子もなくて、もしかして泊まってくのか!?
って思い始めた頃…、
「おい、出掛けるぞ」
「今日は千鶴ちゃんもお預かりしますって雪村さんに言ってあるからね」
いつもの調子で言う土方先生とにっこり笑うかぁちゃんはオレと千鶴を車の後ろにのせて夜の町を走り出した。
「なぁ、こんな夜にいったいどこ行くんだよ?」
国道をどんどん北に向かってクルマを走らせる土方先生に聞いてみれば、
「まぁ、着いてからのお楽しみだ。」
ってなんだかちょっと嬉しそうに運転しながら答えるだけ。
「到着まで時間がかかるみたいだから、寝ちゃっててもいいからね」
助手席に座るかぁちゃんも嬉しそうな顔で振り向いて俺たちに笑う。
そんな二人にオレたち二人は顔を見合わせて首を傾げるだけ。
土方先生の車にはナビなんて付いてなくて、今一体どこに向かってどこを走ってるのかわからない。
だんだん町の灯りも国道沿いに並ぶ店の明かりや街灯の数も減っていって、周りは真っ暗。
たまにトンネルのオレンジの灯りが眩しいって思って目を開けると、
あれ?オレ今寝てた?
なんて気がついたりして。
ぼぉっとする頭で隣を見れば、いつの間にかフリースのブランケットを被ってすやすや寝息をたてて目を閉じてる千鶴がいて、
なんだ、千鶴も寝ちまってらぁ…、
って、オレもいつの間にか膝の上に掛けられてたブランケットを肩まで掛けて目を閉じる。
今何時だろうって、車の時計を見ようとうっすら目を開けたとき、
こっちを振り向いたかぁちゃんの幸せそうに笑う笑顔を、優しそうに見てる土方先生の横顔が見えて、それから前を向いた二人は繋いだ手をギアチェンジするやつの上に重ねて、またクルマを走らせる。
結局何時だったのか確認できなかったけど、
なんか穏やかな気持ちでそのまますんなり眠っちまったみたいでその後のことは記憶がない。
ただ、二人の繋がった手だけがいつまでも脳裏に焼き付いて、
オレも千鶴と手をつないで歩いた田舎道の夢を見た気がする…。
「平助、千鶴ちゃん。着いたよ」
かぁちゃんのちょっと控えめな声に目が覚める…。
「んぁ…?」
「ふふ、起きた?」
「んー…?んー、てかここどこ?」
目を擦って左右に首を振って窓の外をみてみるけど、辺りは真っ暗闇で目的地なんて言えるような場所じゃないと思う。
「ここは…?」
隣で目を覚ました千鶴も暗闇のせいでいつもより控えめな声で尋ねる。
「ふふ、…どこだろうね?とりあえず外は寒いから上着羽織ってそれも持って来てね」
楽しそうに笑ってしっかり防寒したかぁちゃんはドアを開けて車から降りた。
「?????」
なんだか訳わかんねぇけど千鶴と二人、
首を傾げながら、とりあえずかぁちゃんに言われた通り上着を羽織ってブランケットもしっかり持ってドアを開けた。