平助の母親

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そんなこんなで、夏休みも終わり、まだまだ暑い中始まる二学期。

オレらの担任、土方先生は一学期と同じように相も変わらずきちんとしてないと容赦なく鬼教師に変貌する。
なんも変わらない様子だけど、よく見れば気付く。



左手の指輪。



女子なんかはその手のもんに気付くのめっちゃ早くて、やっぱりここでも『女はそーゆーのが好きだな』と思う。

土方先生が夏休み明けに指輪をして来たことは、あっという間に全校生徒に知れ渡り、女子達はもちろん、PTAとかよくでしゃばったりするようなおばさん達は大騒ぎ。
『相手は誰だ』って探りの嵐で、芸能人のスキャンダルとかスクープとか、
きっとこんな感じなんだろうな〜って、他人事のように見てた。

土方先生も騒ぎが起きてるのはわかっているらしいけど、あえて知らん顔を貫いて。
だけど、あんまり周りで騒がしい時は一気に地獄の暗黒鬼に変身して女子だろうがおばさんだろうが誰彼構わず火山を爆発させる。


噂によると

いつもクールで冷静な土方先生が怒鳴り散らした台詞がおばさん達のハートを鷲掴みしたらしく、今では土方先生の結婚を祝福する会みたいのが発足されたとかされてないとか…。


そんな夏休み明けの出来事のなか、9月も終わり、中間テストも終わった頃…。


相変わらず不在だったバスケ部の顧問に、また正式じゃないけれど仮の顧問が来るようになった。

中間テストが終わって話があるって部員全員が集合させられて…。




「今日からまた臨時顧問に来てもらうことになった」



土方先生の『臨時顧問』って言葉を聞いた瞬間、オレら部員全員がきっと一瞬に青ざめて凍りついたと思う…。




「入れ」



そう言って体育館の入り口から現れたのは…。



「今日からあんた達の指導を受け持つことになった斎藤一だ。」

「こいつは来年からこの学校に赴任してくる予定だからな。もう顧問問題でゴタゴタする心配なんざ要らねぇって訳だ」



自己紹介をするその肩をポンと叩いて言う土方先生はなんだかすげぇご機嫌で、沖田と比べたら天と地ほどの信頼を寄せているのが見てわかる。



「いや、土方先生…、俺はまだここに配属されるかどうか…」

「何言ってやがる!教採試験首席で一発合格したやつが!お前が希望すりゃ、配属先なんて決まったようなもんだぜ!」



土方先生に背中をバシバシ叩かれてこんなに嬉しそうな顔をする男を初めて見た。

そういえば思い出したけどこの人、沖田と一緒にうちに来て飯食ってた奴だ。
あんまりにも寡黙な人だったから顔までしっかり見てなかったからすぐにはわからなかったけど…。

聞くところによると斎藤先生は土方先生が教師になって初めて受け持った生徒で、それはそれはとても優秀な生徒だったらしい。
まぁ、あの土方先生がこんだけ嬉しそうにじゃれてんの見たら、よっぽどなんだろうなってわかるけどさ…、





それにしても………、






「俺が顧問になったからには今後あんたたちには出場する試合すべてにおいて白星をあげる事を宣言しよう。俺の専門は剣の道…、剣道ではあるが、試合に於ける心の持ちよう、心構えはいかなる勝負事にも変わりはあるまい…技術を磨くことも大切だが、それ以上に勝利を目指す為に何事にも耐えうる精神を養うことも必要であり練習時においても…」



話なっが!!


「じゃー頼んだぜ」って土方先生が出ていってから俺たち全員なぜか体育館に正座でかれこれ30分くらい静かに喋り続ける斎藤先生を見上げる。


今日…、

ボール触れんのかなぁ……。
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