平助の母親

□109.
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俺の指輪が重なった状態の指輪を眺める名前の嬉しそうな顔を見れて、
苦労して取ったチケットも無駄じゃなかったと、本気で安堵で胸を撫で下ろす。

まさか名前とあんなふうに言い合いになるとは夢にも思わねぇから、
いきなり沸点に達したような名前にマジで驚いた。

あまりにもの豹変ぶりにさすがの俺も大人げなく大声あげちまったが…。

だがお互いの思っていることをちゃんと伝えられて、こんな言い合いならたまにはあってもいいとさえ思えてしまう。

それもすべては可愛い名前の本音を聞けるなら俺はなんだっていいんだって事で。

名前となら言い合いだろうが喧嘩だろうが、無駄なことは何一つない。

お互いを知る大切なプロセスだ。




「名前…」



声をかけなければいつまでたっても指輪から意識をこちらに向けないんじゃないかと思うほどの名前に声をかければ、「ん?」と、すっかりご機嫌の笑顔で俺を見上げる。

そんな可愛い俺の名前。

その笑顔に向き直るように正面を向いて座り直して左手を差し出す。



「………?」



俺の差し出した手を見てキョトンと見上げる名前にふっと鼻で笑ってしまう。



「気に入ってるようだが…、そろそろ俺の指に返してほしいんだが?」



ニヤリと笑って言えば、目を丸くして一瞬で顔を真っ赤にする。
ほんと、見てて飽きねぇな…。



「ご…!ごめんね!?ついうれしくて…、」



そんな可愛い台詞を言いながら慌てて俺の指輪を外そうとするしぐさも、
すべてが愛しい。

本当だったらこんな向き合ってほんの少しの距離だが空けていることすら今の俺にとっちゃ、まずあり得ない。
目の前にこんな愛しい存在があるってぇのにこの腕に収めたりしねえでいるなんてな。

だが、もう少し…。

名前からきちんと向き合ってつけてもらうまでは我慢しよう。

俺の差し出した左手に名前の左手が下からそっと持ち上げるように添えられ、薬指にゆっくりと、何か大切なものを扱うかのような、そんな慎重な手つきで指輪が挿し入れられる。

名前の指につけたときと同様に、ぴったりと吸い付くようにはまる指輪を見つめる名前の眼差し。



「名前?」



俺の呼び掛けに顔をあげるかと思ったが、名前はそのまま俺の左手に手を添えたまま、優しい表情で俺の指に収まった指輪を見つめる。



「………、ぴったりだね」



微笑みを浮かべながら、視線を指輪に向けて、柔らかい声で呟く。

穏やかな時間。



「そりゃ…、手作りだからな…」



答える俺の声も自然に穏やかなものになる。



「ここ…、外側にも小さく穴が空いてるんだね」

「ん?あぁ…、それもおまえをイメージしてやったんだ」

「?」

「なんだと思う?」

「えぇ〜!?いきなり?クイズ形式?」



えぇ〜!と言いながらもクスクス笑って嬉しそうに俺に笑顔を向ける名前がどうしようもなく愛しくて、
もう少し俺も我慢のできる大人だと思っていたが、一秒でも離れている状態が惜しくて、俺の手に添える名前の左手の手首を掴みぐっと引き寄せ右手で肩を抱き寄せた。
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