平助の母親
□105.
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「んーーー!んーーー!んーーー!」
苦しさと突然の出来事にかなりパニックなわたしはもう何がなんだかで、
ただひたすらわたしを閉じ込めるとしくんの胸を叩き続けることしかできなくて…、
だけど、としくんはわたしの頭の後ろをしっかりと抱え込んでしまってこの息苦しさからは解放してくれなくて…、
激しく深いキス。
しつこいくらいに絡み付いてくるとしくんに捕らえられてもう立っていられないくらい頭の奥がジーンと痺れてきて…、
としくんのことを叩いていた手は、もう動かせるスペースもないまま、しっかりととしくんに抱き締めれていて、
としくんの掌が更にわたしの髪の毛を掻き回すように動いて何度も何度も角度を変えて深められていく。
「や…、ぁ、んん…っ!」
体を抱き締めていた手がわたしの肩や二の腕の後ろ側を撫で始めて次第にタオル越しに撫でる手が背中を伝って下がっていく。
「やぁ…、んんん!」
キスの合間に必死に抵抗して声を出すけどすぐに塞がれてしまってやめてくてない。
「ん、んーーー!」
渾身の力を込めて抵抗して、塞がれたままで意思表示をすれば最後に思いっきり吸い付かれて、痺れを残してやっと離れてくれたとしくんの顔はすごく満足げで、
それからわたしのあごを親指と人指し指を添えてくっと持ち上げる。
「おまえ、誘ってんだろ」
ニヤリと笑う余裕顔のとしくんに、かぁぁっとなったわたしは思わず…、
「誘ってないわっ!!」
自分がタオル一枚だってことも忘れて思いっきりとしくんの腿にアウトローを入れていた。
「な……、………っ、………、なんなの突然っ…!?」
まだまだ乱れが収まらない呼吸のまま叫ぶように聞くわたしに、としくんもわたしと同じように少し声を裏返して腿を擦りながら眉間にしわを寄せた顔で見上げる。
「なんなの突然っておまえ…、そりゃこっちのセリフだろうが…」
「……?」
肩で息をして胸元のタオルをぎゅっと握りしめ、怯えるような警戒心むき出しのわたしの顔を見てとしくんは大きくため息をついて腿を擦っていた手を止めて背を伸ばす。
「居留守なんて使いやがって…、開けろって言やあ『いやだ』とか言いやがるし…、一体どうしたってんだよ?」
としくんの手が伸びてきて、
それに一瞬怯えてしまって肩を竦めると、としくんも一瞬目を丸くして、
だけど、そのままその手をわたしの頭にポンと乗せた。
「ったく…、そんな警戒してんじゃねぇよ…。悪かったな、」
そう言ったとしくんの眉間にはもう刻まれたしわはなくなって、いつもの優しい瞳でわたしの心の奥を覗きこむかのように真っ直ぐに見つめられる。
その優しい色に、強ばっていた何かが脆くほだされていくようで、ついじわりと涙目になってしまいそうになるけど、今まで一人の時間感じていたことを見透かされてしまうんじゃないかと思って、慌てて目を逸らした。
そんなわたしにまたため息をついたとしくんはふっと笑って、
「おい、さっさと服着ねぇとまた襲っちまうぞ」
頭に乗せていた手をわたしの背後にある壁に付いてグッと顔を寄せてニヤリと笑う。
「っ!!やっ!ダメ!ステイっ!」
「っ…、ぐぁ!」
咄嗟に目の前に近付いてくるとしくんの顔面に掌底打ちを付き出して、としくんが怯んだ隙に廊下を駆け抜ける。
「ステイっ!ステイだからね!?」
廊下から自分の部屋に繋がる扉の前でもう一度念押しで言ってから部屋に飛び込む。
「犬じゃねぇぞ俺は…!」
廊下のさきからこれまたひっくり返ったとしくんの声が聞こえた。
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