平助の母親

□105.
1ページ/3ページ

☆★戸惑いの再会★☆QLOOKアクセス解析






ぐう……。




お腹すいて目が覚めた。

うっすらと開いた視界はなんだかボンヤリ暗くって、壁にかけた時計を見上げれば昼下がりもとっくに過ぎた夕方に近い時間を指していた。



「え…、もうこんな時間…?」



寝起きで焦点が合わないのと裸眼のせいで時計の針はまるで見えなかったけど、窓から入る日差しの強さが幾分和らいでいる様子にお昼も食べずに寝すぎてしまったとぼんやり少しずつ覚醒していく。


うぅ、寝すぎて体がダルい…。
こんなに寝たのどれだけぶりだろう。病気でもないのに…。


んーーー!っと両手を伸ばしてぷはぁと身体中の力を抜くと、だらんと伸びた右手が転がっていたケータイに触れる。

それに顔を向けてみるけれど、



……………、



きっと誰からも着信のないディスプレイは真っ黒のまま。
そう思いながらも手にとって見てみれば、やっぱり画面に写し出されるのは黒いディスプレイに反射して写った寝起きでボンヤリ瞼の腫れたひどい顔。

なんか、
寝てただけなのに一日がすごく長く感じる。



お腹も空いたけど、その前に気持ちをサッパリさせたくて布団から抜け出すとそのままシャワーに向かった。

脱いだ服を洗濯機にいれて、さっとお風呂場に入る。
お腹すいてたけど一人の時間はたっぷりだからシャワーを頭のてっぺんから浴びて、それからゆっくり丁寧に洗って汗を流す。

キュッと蛇口を閉めて、お風呂場から出てタオルで体を拭くけれど、せっかく流したばかりなのにジンワリと汗が滲み出てくるみたい。



「あ…、着替え持ってきてないや…。」



一通り拭いてから気が付いたけど、
…でも、
家に誰かがいる訳じゃないし…、



そのままバスタオルを体に巻き付けて洗面所から廊下に出て寝室へ向かおうとすれば、家の外から聞こえる大きなエンジン音。



「え、」



思わず玄関の方を振り返って見てしまう。

エンジン音は静かになり近くで停車したのか完全に消える。



「え…、まさか…、」



その場で動けなくて玄関の扉を真正面に、体に巻いたタオルを胸元でギュッと握りしめてドキドキと心拍数の上がる心臓を押さえた瞬間


家の中に鳴り響くインターフォン。



わ、わわ、わ…、
ど…、どど…、
どうしよう………。


なんだかよくわからないけれど、なぜか頭の中は『どうしよう』というフレーズがグルグルぐるぐる廻っていて、どうしたらいいのかわからないのに、足は勝手に玄関の方へそろそろと歩き出していて、気が付けば両手を玄関の扉に付いてドアスコープに顔を寄せようとしていた。

そんな時に再び鳴り響くインターフォン。



「っ!!?」



思わず声にならないような息をあげてしまう。



「名前…?」



こんな扉の向こうでもわたしの気配を感じたのか、としくんのわたしを呼ぶ声が聞こえてドキドキが…、
心臓がどんどんどんどんうるさくなる。



「…………、」

「……?名前?いるんだろ?」

「……!」



ドキドキしすぎてなんていったらいいのか全然思い付かないでいると、突然どんどんと扉を叩く音と振動に更に跳ね上がる心臓。



「っきゃ!」

「おい、いるんならさっさと開けやがれ」



どんどん激しく叩かれる扉と、としくんの声に訳のわからない恐怖を感じてしまったわたしは思わず……、





「い…っ、いやだっ!」


そんな子供のような声をあげてしまっていた……。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ