平助の母親
□104.
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あれから、気が付けばお墓の前でしゃがんで大泣きしてしまったわたしは、他にお参りに来ていたおじいさんおばあさんに
「どうしたね?大丈夫かね?」
「ほーかほーか、辛かったんじゃのぉ」と優しく背中をさすってもらっていて、
恐らくお供え物のお下がりだろうと思われる豆大福をぽんっと掌に乗せられ、
「しっかりせなかんよ?」
「元気出しな?」と、慰められていた。
なんとか「大丈夫です、ありがとうございます」と言ってさよならしたけれど、多分きちんと発音できてなかったと思う…。
涙と汗と鼻水でグシャグシャの顔で何度も何度も「ありがとうございます」って言ってるうちに、結局拭いちゃってたし。
お墓洗ったタオルで…。
おじいさんたちの姿もすっかり見えなくなって、わたしも炎天下の下でいっぱい水分分泌しちゃったし…、
「帰るね」
荷物をまとめてお墓に向かって言えば、
『あんたはもぉ…』
なんて呆れる母と苦笑いの父が見えたような気がした。
「次来るときはちゃんとするから」
そんな言い訳みたいなことを言って
二人のもとを後にした。
平助と行こうと思ってたカフェも、一人でそんな贅沢したって、せっかくのランチもきっとそんなに美味しいと思えない気がしてまっすぐ素通り。
電車に揺られてそのまま誰もいない家に向かう。
ご近所さんもお盆でお出掛けなのか誰にも会うことなく玄関まで辿り着いた。
なんだか静かな町並みに寂しさを感じたけれど、こんな汚い顔だし誰かに見られなくて良かった!
と、何かを吹っ切る気持ちで玄関を開けた。
「ううう……、なにこれ……。想像以上に酷すぎる……。」
いっぱい汗をかいた全身をきれいにしようと向かった洗面所の鏡に写った自分の顔を見て思わず驚愕の声が漏れる…。
そこで見た自分の顔はノーメイクなのはもちろんだけど、日焼けして頬は真っ赤に、
それから、瞼は涙が出た量に比例して、かなり浮腫んでて、
自分の顔なのに、見ていて不憫。痛々しい…。
はぁもぉ…。
いい歳してこんなになるまで泣くなんて…、
しかも見知らぬ人の前で…。
それに泣いた理由も…。
もぅ…、
ほんとしっかりしなよわたし。
いつからこんなに情けなくなったの?
一人なのは今だけじゃない。ずっとこのままひとりぼっちな訳じゃないのに…。
こんなに思い悩むことじゃないんだよ本当は。
「ぃよしっ!」
バシッと両頬に喝を入れる。
「っっ!!?いっ………、たぁーーーっ!!」
真っ赤に日焼けした頬は刺激に敏感で、浮腫んだ目から更に涙が溢れ出た。