平助の母親

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☆★ひとり有り余る時間に涙★☆QLOOKアクセス解析





いつも通勤で使う電車とは反対方向の電車に揺られると都会の町並みから徐々に広がる緑色のキャンパス。
電車だってきっと始発駅から同じ速度で運転しているはずなのに、景色が広がるだけでこんなにも体感速度が変わるもんなんだ…。

ゆっくり流れる景色をぼーっと眺めながら辿り着いた広々とした墓地につくと深く深呼吸して身体中に空気を取り入れてからふぅーっと吐き出す。


自分の住む町もそんなに都会って訳じゃないけれど、やっぱり緑に囲まれた空気は何倍もおいしくてからだの中から浄化される気分になる。

本当だったら平助と来る予定だったのになぁ〜…。

お参り帰りには駅の近くのカフェでランチ、一緒に食べようと思ってたのに…。


めそっとしながら拭き上げたお墓はピッカピカのツルツルになって、めそっとしながらも少しだけ「よしっ」って気分。
ついついお墓を拭いたタオルで額から流れる汗を拭きそうになる。
ヤバい、ファンデ取れちゃうとこだった…。


噴き出すようにあとからどんどん流れてくる汗も、さみしい気持ちも拭いきれないまま、父と母が眠る墓前に手を合わせる。

お父さん、お母さん。
なかなか来られなくてゴメンね。
やっと来れたのに平助連れてこれなかったし…。

目を閉じて、届くことなんてないってわかっていても、二人に聞いてもらいたい近況報告をする。

千鶴ちゃんと平助がお付き合いを始めたことや、成績が千鶴ちゃんのおかげでぐーんと上がったこと。
バスケ部の活動も平助の実力が認められて二年生ではじめてのレギュラー入りを果したこと。
三年生が引退した今では部長に選ばれて頑張っていること…。

それから自分の事も…。


新しい職場では社長をはじめ皆からとても良くしてもらってること。
歓迎会でキャンプに連れてってもらった事や、メーカーで表彰されて社長にオートクチュールのドレスをお祝いで贈ってもらった事…。

それから…、




藤堂さんとの14年ぶりの再会…。





再会後、まさか平助に会いに来るなんて思ってもみなかったけれど…。

でも、
やっぱり彼も自分の子…、
平助の成長を見てみたいって…、
ずっと忘れずにいてくれたことが嬉しかった…。


いろんな責任や重圧、それに忙しさに追われる彼が、私たちのことを今でもずっと思っていてくれるなんて、


彼はほんとに素敵な人…。


だけど、彼の横なんてわたしにはあまりにも不釣り合いで、彼がいくらわたしを望んでくれたとしても、彼を取り巻く環境がそれを許してくれることなんて絶対ない。
一緒にいちゃいけないんだってわかってるから。

一緒に過ごせた短い期間、それだけでもほんとに夢のようで幸せだった。


だから、
その幸せが大きい分、
失うものが大きい分だけ、
あとから来る辛さも寂しさも半端なくて…。

だったらわたしは誰かと一緒じゃなきゃいられないような幸せなんていらない。

家族と笑って暮らせれるなら、それだけでいいって、
それがわたしにとっての幸せなんだって思ってたのに…。




どうしてこんなに涙が止まらないんだろう…。
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