平助の母親

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来たときと同じように全員車に乗り込み店を後にする。
本気で心の底から不本意だったが全員乗せて店を後にする。



「平助くん、やっぱり驚いてたね。僕のおかげで一つ社会勉強できたでしょ」

「そりゃ驚くだろフツー!」



総司のフリにいちいち全力で返事する平助。
構わなきゃいいものを…、と思いつつ俺も人のこと言えたもんじゃねぇなとさっきまでの自分を思い悔やむ。

平助が思った通りの反応を返すもんだから、ますますこいつの口は止まらねぇ。



「でも折角本当のお父さんが現れてこれからの展開で人生180°変わるかもしれないってのに…。名前ちゃんってよっぽど変わってるね。こんな玉の輿が目の前にぶら下がってるのによりにもよって土方さんだなんて…。平助くんもそう思わない?本物のお父さんについていけば将来安泰じゃない」

「や…、オレは別に…」

「ま、将来安泰だとしてもその分自分勝手な行動はできないカゴの鳥状態だろうけどねー、自由との引換ってやつ?それが叶わなくてこんなことになっちゃったのが君のお父さんって訳だけど。」

「総司っ!」

「はいはい、黙りますよ」



ったく、どんだけデリカシーねぇんだこの男は…。
見ろ。全員黙りこんじまったじゃねぇか…。
まぁ、もとより総司の独壇場みたいなもんだったがな…。

俺が総司を黙らせたことで、ますます車内がシンとなる。











「明日からお盆休みですね〜」



暫くの沈黙の後、後部座席の総司がいつもの調子で間延びした台詞を吐く。
それに誰も応えることのないこの微妙な間。


「あれ?みんな起きてるよね?」



本人ニヤついたいつもの表情だが…。
実際隣に座る平助に覆いかかる空気が半端なく重い。



「そ、そっかぁ!みんな明日から休みなんだっ!いいな〜、私は月曜日からだもんな!沖田君はどこか遊びに行くの?」



助手席に座る名前が後部座席の異様な空気にすかさず総司の問いかけに返事をする。
確かにこの面子でこいつの相手をできるのは名前しかいない。
いつもこいつの暴走を止める役目の斎藤も今日はいねぇしな。

そんなことを思いながら名前の家からの最寄り駅目指して運転しているとオレが今思っていたやつの名が会話に出てくる。



「あそうそう、特にどこかにいく訳じゃないんだけどお盆って図書館とか休みじゃない?だから一くんの暇潰しの相手にでもなってあげようかな〜って思ってるんだ。だから土方さん、このまま一くんちまでお願いしますねー」

「はぁっ!?」

「だからぁ、一くんの家まで送ってくださいねって言ってるんですけど?」

「ですけど?、じゃねぇよ!なんで俺がわざわざテメェの送迎してやらなきゃなんねぇんだよ!俺ぁテメェのお抱え運転手じゃねぇぞ!」

「あはは、僕だってこんなボロ車で口煩い運転手なんて嫌ですよ。でもこんな連休前の金曜日の時間に僕みたいのが一人で駅なんて歩いてたら危険じゃないですか。」

「はぁあっ!?」

「こんな時間に歩いてたら女の子が後つけてきたりして大変なんですから。何かあったら責任とってくれるんですか?土方先生?」

「〜〜〜〜〜!バカなこと言ってねぇでさっさと降りやがれ!お前なんかもう二度と乗せてやんねぇからなっ!!」



有無を言わさず名前の家の最寄り駅に付けて怒鳴り散らすと



「ハイハイ、わかりましたよ。降りますよ。」



まったくうるさいんだからと飄々とした様子でドアを開けて車外に出ていく。
そして助手席の窓をコンコンとノックして名前に窓を開けさせるとにっこり笑って


「名前ちゃん、ほんとにこんな口煩い人と一緒になるなんて疲れるだけだよ?そりゃ今はあばたもえくぼみたいな感じでいるかもしれないけどさ…、きっとそのうちウンザリすると思うから。その時はいつでも僕のとこにおいでね。僕のここ、いつでも空けておくから」



にっこり。



そういうと誰からの返事も待たずに「じゃーねー」と手をヒラヒラとさせて駅へと歩いていった。




「……………、」

「………………。」

「……………。」




総司の一人舞台に誰もが言葉なくあっけにとられ固まる…。
千鶴なんて息をしているのかさえ疑わしい。大丈夫か…?



「…………、帰るぞ……」



一つ咳払いをしてウィンカーを出す。
俺の一声に我に返った子供たち。



「お、おぉぅ…、帰ろうぜ…」



平助の返事に残りの二人もうんうん帰ろうと笑う。ぎこちなく。




斎藤が如何に重要なポストか思い知ったぜ…。
大したもんだぜ、あいつは。



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