平助の母親

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「ねっ、ね!名前ちゃんはトシのどこが気に入って結婚してくれるの?」



ホレホレ、はよ言わんかいとばかりににやついた顔で名前に茶を注ぎ、迫る姉貴。



「えぇっ??ど、どこってあのその…っ……」



両手でグラスを持ち、注がれる茶を受けつつ視線を挙動不審にキョロキョロとさせる名前に総司までもが横槍を入れる。



「そうだよ名前ちゃん、本気でこんな土方さんと結婚するとか言ってるの?ほんと有り得ないんだけど。絶対泣かされるよ?
今のまま、誰のものでもない方がじゅ〜うぶん幸せでいられると思うけどな〜」

「ちょっと総司君、そんなこと言って…、名前ちゃんの気が変わっちゃったらどうすんのよ!でも大丈夫よ?泣かされてもしっかり私がお説教してあげるからね!」

「ぇ…、あの、泣かされるって前提なんですか…」

「バカ、泣かすこと前提で結婚話進めるヤツがどこにいるってんだ。オレは泣かせたりなんかしねぇよ。最初からそう言ってんだろうが」



飲んでいた湯呑みを置いて右手の拳で軽く名前のこめかみを小突くと、

「あー、暴力反対!僕の名前ちゃんに気安く手を出さないでくださいよ」

「あらあらやぁねー!のろけるんじゃないわよっ!」

と各々同時に反応する。
ったく、ちったぁ静かにしろってんだまったく。



そんなやり取りの中、背後の席から聞こえてきた平助の驚愕の声。
それに振り返ってみれば、何やらケータイを覗きあって固まる二人。
なんだ?




「あはは、驚いてる!そりゃそーなるよねぇ〜。実のお父さんがあんな人だって知ったらさ!」



後ろの二人の様子を見るまでもないと言った様子でグラスを傾けすました顔で茶を飲む総司に
「何?何の話??」
とカウンター越しに前のめりになる姉貴。



「ふふ、土方さんは知ってたんです?」



姉貴の興味に煌めく視線を受け流してニヤリと俺に視線を寄越す。



「……、あぁ、授賞式のホテルの一件の時からな」

「え……?」



茶を飲みながら答える俺に目を丸くした名前が驚きを隠せない様子で見上げてくる。
その顔をちらりと見下ろし左手に持った湯呑みに視線を逸らす。



「実際あの時は近くで見た訳じゃなかったから確信はなかったが…、藤堂っていう名に聞き覚えがあったからな。最近親子揃って知事選当選なんて報道があったばかりだったし」

「あ……、」

「あの夜、俺はあの男みたいな良い家柄じゃねぇなんて言ったが…、実際確信したのはさっきあいつの襟章見てからだったな」



ニヤリと笑って見下ろせば、未だに驚きの表情を保ったまま固まる名前。



「あの夜って…、なんか厭らしい言い方だなぁ!あぁもぉっ!こんなことならやっぱり僕も行けばよかったよ、授賞式!」



俺の余裕な態度が気に食わなかったのか総司にしては珍しくぶんむくれて残りの麦茶をガブガブ飲み干す。



「そぉねぇ…、なんだかよく話が見えないけど、確かにうちは良い家柄ではないわねぇ、両親も随分昔に他界しちゃってるし…、」



ふぅ〜んと鼻からため息を吐きながら頬に手を当てて呟く姉貴を見上げる名前の眼差しに気が付いたのか、明るい笑顔を作って言葉を続ける。



「うちにも子供がいないし、トシも未だに一人でしょ?そこに名前ちゃんみたいな子がお嫁に来てくれるなんて、こぉ〜んな嬉しい話ないわよっ!それにインスタントみたいに甥っ子までできちゃうなんて!」



視線をあげて俺たちの後ろに座る子供たちに笑顔を向ける。



「さみしかったうちの家系が一気に賑やかになって、うちの親もきっと天国で泣いて喜んでると思うわよ」



にこっと名前に笑みを向けると名前もその笑顔につられて微笑み返す。



「でも、トシが初めて名前ちゃんを連れてきたときはほんと驚いたわよ〜。」

「??」

「だってこの子が女の子を私たちに紹介するなんて一度もなかったんだから!」



ね!と俺に満面の笑みを向ける横で、


「それはあれじゃないですか?よっぽど長い間女の子に縁がなかったか連れてこれるほどまともな女の子と付き合ったことがなかった…じゃないです?」


ね、土方さん!とここぞとばかりに嬉しそうに言う総司。
なんだそのどちらをとっても墓穴を掘りかねないフリはっ!?


総司と共に同じ角度で顔をこちらに向ける名前の視線に一瞬捕らえられグッと息を飲み込む…。




じっと見つめる名前の瞳になんて答えりゃいいんだ俺はっ!
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