平助の母親

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☆★平助の父親★☆QLOOKアクセス解析






今日も原田さんのご厚意に甘えて家まで車で送ってもらう。
あれからショールームにおかしな人がきたりしないか皆が警戒してくれていたせいか、何事もなく数日がすぎて、明日明後日の土日を終えればゴールデンウィーク同様、お盆休みの連休を迎えようとしていた。



「あの…、本当にもう大丈夫ですよ?」

「ん?」

「送ってもらうの」



もうほぼ毎日のように繰り返すやり取りに呆れたようにクスッと小さく笑う原田さんだったけれど、今日は初めてこれまでとは違う言葉がその後に続いて帰ってきた。



「ふっ、そぉだな…、そんなに毎日毎日言われちゃしょぅがねぇよな…」

「…え?」

「もうすぐ盆休みだしな。それまで何にもなかったら休み明けからはこのお役目も終わりとするかな?」



にやっと笑う原田さんは日の長くなった夏の夕焼けを背負っていて私から見える原田さんの表情は逆光でよく見えなかったけれど、長めの前髪が綺麗な夕陽と溶け合って思わず見とれてしまう。

そんな私にまた笑ってくっくと喉をならす原田さんは



「こんなおいしいお役目ももうおしまいかー」



なんて歌うようなリズムで言いながらフロントガラスの向こうへと下げたままの目尻で視線を向けて運転を続ける。



「盆休みはどっか行くのか?」



今日の原田さんの頭の中はどうやらお盆休みっていうキーワードでいっぱいみたい。
何か楽しみな予定でもあるのかな?
聞いてほしいのかな…?

そんなことを思いながらお盆休みは平助も部活がないのでお墓参りに行くくらいだと伝えると「そうか…」と呟いてそれからぱっと明るい表情をこちらに向けて、いつになくはしゃいだ声で「ならよ」と言葉を続けた。



「俺と新八とで海にでも行こうかと思ってんだが、一緒にどうだ?」

「え…?」

「海っつっても泳ぐ訳じゃねぇんだが、」

「…はぁ…?」

「新八のやつ、ああ見えて実は資格マニアでさ。一丁前に小型船舶の免許持ってやがってよ、あいつのオヤジさんの船借りて海釣りでもどうだって話になっててよ」

「へえぇ!」

「海釣りなんてなかなか経験できるようなモンでもねぇし、どうだ?」

「そうですねぇ!海なんてそんなに行くことないし、平助きっと喜びますよ!」

「だろ?」

「はい!今日さっそく平助に話してみますね!」

「あぁ、頼むぜ?」

「はいっ!」



海なんてほんとに何年ぶりだろう!
まだ父が元気だった頃、家族で四人揃って父の運転で行ったっきりもう行ってなかったなぁ…。

そんなことを思いながら、永倉さんって意外と勉強熱心なんですねなんて微かに失礼な会話を楽しんでいるとそろそろ原田さんとの時間も終わりが近づく。

原田さんが左折のウィンカーを点滅させて角を曲がると視界に入ってきたのは、前方の路肩に寄せられハザードランプが炊かれている見覚えのある車。



「あ?あれって土方さんの車じゃねぇか?」



としくんの車に気が付いたのは私だけではなく、やはり原田さんも同様に気がついたらしく、角を曲がり終えても速度を上げることなくそのままのスピードでとしくんの車の後ろに停車する。



「え……」



停車した車の先に見える光景に思わず声が漏れてしまう。



「あの男…」



私の声に続いて原田さんが呟く。


「あいつ…、こんなとこまで来やがるなんて…!」




原田さんがそう言うのとほぼ同時に、
気が付けばわたしはシートベルトを外して社内から飛び出していた。
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