平助の母親
□92.
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そんなこんなで無事に午後を迎えて週末に消費してしまったドリンク類やその他の消耗品の買い出しから戻ったのは日も傾き始めた夕方五時頃。
直射日光に当たるのも少し躊躇うお年頃だからといって、日射しが少しでも弱くなってからに…、と思って遅めに買い出しに出たけれど…、
さすがに遅くなりすぎたかな…。
なんて心の中で反省しながら裏の駐車場から事務所へと入るとショールームの中央、カウンターの前に何やらスーツを着た男性客が原田さんと話している。
普通の接客とは違う雰囲気に原田さんの後ろから井上部長まで顔を出して対応を始めた。
「あ…、苗字さん、」
わたしが帰ってきたことに気がついたサービスフロントの山崎さんがわたしを引き留めるように声をかけてきた。
「??何かあったんですか?」
カウンターへと視線を向けたまま訊ねると山崎さんは椅子から立ち上がりわたしの腕をつかむと
「こちらへ」
と言って荷物を持ったままのわたしを若干引きずるような勢いでロッカールームに向かって歩き出した。
「え、あ、あの…、」
普段からあまり絡みのない山崎さんに強引に連れ込まれて、一体何事かとどきどきヒヤヒヤ焦っていると、ロッカールームの扉を閉めた山崎さんはわたしの荷物を手に取ると机の上に置いて、わたしへスッと視線を向ける。
「苗字さん、あなたはしばらくここにいた方がよろしいかと…。」
「…え?」
「先程の客…、どうやらあなたを探してここへ訪ねてきたと言っていたように聞こえましたから」
「え?」
「どうやら車目当てではなくあなたに会いに来たようで…、原田さんが対応していますが結構な時間ああしているので…。とにかくあの客が帰るまでは表にでない方がいいでしょう」
そういうと扉に手をかけて
「後で声をかけますからそれまでここにいてください」と言って、スッと姿を消してしまった。
「……え、………?」
取り残されたわたしは訳もわからないままポツンとロッカールームに佇むのでありました…。