平助の母親

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名前のドレスはクローゼットへ。

二人でシャワーを浴びた後はバスローブだけを身に纏いベッドイン。
だが、二人でベッドに入ればそんな纏わりつくようなものすら邪魔でしかない。

互いを肌で感じるだけでこんなにも穏やかで満たされることなんて他にはない。

素肌の名前を抱え込むように後ろから抱き締める。
同じシャンプーを使ったのに、まるで別物なんじゃないかと思うくらい、落ち着く香り。



「名前……」



名前への想いが溢れすぎてつい声に出てしまう。



「…ん?」



呼び掛けられたものだと思ったのか少しだけ首を動かして返事をする名前にふっと笑い「わりぃ、なんでもねぇ」と答えるとふふっと笑って顔を元の位置に戻す。



「あのね、としくん…」

「ん?」

「話……、聞いてくれる……?」

「……………」



正直名前がどういう方向に話を持っていくのかわからねぇ。
だが、こうして俺の元で落ち着いて収まっている名前の言うことだ。聞かないわけにはいかねぇだろ。



「あぁ…」



短く返事をすれば、少しだけ俯き小さく息を吐く名前。



「あの…、その、何から話せばいいのか…、改まると、戸惑っちゃうね」

「順番なんてどうだっていい。お前の思い付くままに言ってみろ」



ふっと笑って言えば小さく「ありがと」と呟いて俺の手を握る名前の手に力がこめられる。



「えっと…、さっきの…、あの人だけど…、あの人はその、平助の……、………。」

「…………」

「………っ、…………」

「父親…。」

「………、……うん…」



自分から話すと言っていた割りにあまりにもしどろもどろな名前に助け船を出すつもりで先を言えば申し訳なさそうな声で小さく頷く。



「………、」

「…………。」



次に名前が何を言うのか待ってはみたが俯いて顎に手を当てたまま先に進みそうもない名前にため息をついて抱き締める腕に力をこめる。



「…と、としくん…?」

「言いにくいなら無理すんな」

「………ぅ、でも…、」

「もう終わってんだろ?」

「………、うん……」

「俺の側にいてくれるんだろ?」

「うん」

「ならもう何も聞くことなんかねぇよ」

「………としくん………」



名前を抱える腕を引き抜き体を反転させてこちらを向かせると俺の顔を見上げる不安げな表情のその額に口付けを落とす。



「おまえがこうして俺の腕の中に居てくれりゃ俺はそれで充分だ」

「………うん…」

「ずっと…居てくれるよな?」

「……………、」




なんでそこで黙るんだよ…。



「……名前……」



名前の頭を撫でて滑らかな髪を梳かすように滑らせる。



「名前、何か言いたいことがあるなら言ってみろ。何か思うことがあるんだろ?」



髪を滑らせた手を名前の頬にあててその輪郭をなぞる。



「………、」

「……?」



眉を下げた大きな瞳で俺の顔を見上げる名前に言葉を促すように俺も名前の瞳を覗きこむ。



「その…、………だけど……、」

「?」



視線を伏せるとまたしどろもどろな口調で話し出す。



「わたしもとしくんの側にいたい…。でも、そしたらいつか…、いつかとしくんの人生の邪魔になっちゃうんじゃ…、ないかな…って……、」

「……?」



正直名前の
言っている意味がわからねぇ。



「俺の………、人生の邪魔…?」
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