平助の母親
□87.
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☆★としくんのプロポーズ★☆
「うっ…!」
俺の部屋に入るなり眉間にシワを寄せて両手で口と鼻を覆う名前。
「わっ!悪い!充満してるな。お前の部屋に行くぞ!」
慌てて名前の肩に手をおいてドアノブに手をかける。
「う…、ううん。だぃ…じょうぶ!」
何が大丈夫なのか。眉間にシワを寄せた苦しげな表情なのに、無理してキリッと何かを決意するように力強い目付きで部屋の奥へ進んでいこうとする。
「馬鹿、せっかくの衣装に臭いがついちまうだろうが。いいから行くぞ」
「あぅ…ぁ」
何かを言いかけたが有無を言わさず廊下に出る。
「俺の服も煙草臭いよな。先に部屋行っててくれ。着替えてから俺も行…」
「ううん。大丈夫だから!…このままで……」
煙草が嫌いな名前を思って、名前の部屋に臭いを持ち込まねぇようにと思い部屋に戻ろうとした俺の背中のシャツを掴む名前。
コツンと名前の額が背中に当てられるのが分かる。
「……、臭い、ついちまうだろ…」
「…………。」
「無理すんな」
「…………。」
俺が言葉を発すれば返事はないが、その度にシャツを掴む手に力を入れギュッと握られる。
「……、わたし…、無理なんてしてない」
そう呟く声はか細く頼りない。
「そんな声で…、何の説得力もねぇぞ」
振り向いて名前の頭を撫でてやると今にも泣き出しそうな潤んだ瞳で見上げてくる。
「いいから先行ってろ。すぐに行くから。」
名前のこの表情を見ると、今すぐにでもこの腕の中に閉じ込めてしまいたい衝動にかられるがふっとため息をついて感情をガス抜きする。
名前の頭を撫でてドアノブに手をかけようとすれば、勢いよく俺の懐にしがみつく名前。
「……、名前……」
「……側にいてほしいの…。離れてたくない………」
「……………」
「……わがまま……言って、……ごめんなさい……」
小さな肩をすくませて俯き、俺の胸に額を埋める名前の震える声を聞けば、
もう俺の感情は押さえることなんて無理に決まっている。
「バカやろ…。そんなのわがままなんて言わねぇんだよ………」
名前の肩を抱き頭を撫でて首筋に顔を埋める。
「ごめ…なさい………」
俺がキツく抱き締めたことにより苦しくなったのか顔を上げ絞り出すような声で謝る名前。
首筋に埋めた顔を動かせばすぐそこにある名前の耳朶。
「すまない…。もう二度とお前を離さねぇ…」
唇を触れさせたまま囁いてもう一度そこに口付ければ、いつもと同じようにくすぐったがりの名前。
「や…、んもぉ…!」
ふっと笑い顔を上げて名前の顔を見れば、真っ赤な顔で俺を見上げる名前。
同時に笑い同時に顔を寄せあい口付ける。
背伸びして俺の首に両手を伸ばししがみつく名前の腰をぐっと抱き寄せる。
愛してる
もう二度と、お前を離さねぇ。