僕のおねえさん

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「ただいまぁ〜」



夕方六時半を過ぎた頃。
やっと名前ちゃんが帰ってきた。



「おかえり!名前ちゃん!」

「総ちゃん、ただいま…、って!鷹の爪団やってる!」



そういうと名前ちゃんはテレビの画面に映し出されていた子供番組のアニメに食いついた。



「デラックスファイター、まぁたセコイこと言ってるね!」



画面を指差しながらニコニコ振り返る名前ちゃんの表情にあの時の光景は何かの見間違えなんじゃないかと思ってしまうくらい、泣いた面影なんて見当たらない。

そのことがなんだか無性にムカついて、名前ちゃんが帰ってきた時に感じた一瞬の嬉しさは、待っていた時間の分に反動して僕の心は一気にドス黒くて重苦しい何かで淀んでいく。



「ねぇ名前ちゃん…、」



自分で思ったよりも低く咎めるような声で問いかける僕の顔は、その声に似合う表情になっていたんだろう。
僕の顔を見上げた名前ちゃんの目は、一瞬で大きく、丸く見開いて動きが固まる。



「今日一日、どうだった?」



僕の問いかけに驚いたままの表情で「え?」と声を発するけれど、そこから繋がる言葉は出てこないみたい…。
よっぽど僕の醸し出す雰囲気が怖かったのか、大きく見開いた瞳が小刻みに揺れている。



「学校で泣いてたでしょ」



名前ちゃん相手に探りを入れるのも僕には何の意味もなく、ただの時間の無駄だと思ってストレートに聞けば、ゴクリと名前ちゃんの喉が動いた。



「どうして平気なフリするの?」



近付く僕に後ずさる名前ちゃん。



「島田さんにはあんな風に弱いとこ見せて何でも話せるみたいな感じなのに…、…どうして僕にはそうやって、いつも強がって笑顔ばっかりなのさ!そんなに僕は頼りにならない?僕は…、僕は、名前ちゃんのたった一人の姉弟なんだよ!?」



あの時の島田さんと名前ちゃんとの距離が…、あの光景が目の前から消えなくて、話しながら距離を詰める僕は思わず大きな声を出していて、気が付けば壁を背後に名前ちゃんを両手で閉じ込めていた。

後ろには壁、顔の両側には僕の腕。
そして正面には僕がいて。
完全に行き場をなくした名前ちゃんは驚いた顔のまま僕を見上げて、その翡翠の瞳を揺らすばかり。



「ねぇ…、僕はもう…、あの頃みたいな、子供じゃないよ?」



見上げる名前ちゃんの瞳はすっかり怯えていて、
僕は…、
僕は名前ちゃんを怖がらせる為に待ってた訳じゃないのに…、
どうしてこうなっちゃうんだろうと呆れて情けなくて、
こんな風にしかできない自分に腹が立った。
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