僕のおねえさん

□33.
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島田さんと二人、お互いに何もしゃべらずに会社へと車を走らせる。


あの後、島田さんは校舎の裏へ移動したバスの中で年甲斐もなく泣きながら話す私の話をウンウン頷きながら優しく背中をさすって最後までキチンと聞いてくれた。



自分のしている事が人の迷惑になっていると思うと、申し訳なくて悲しくて…。



そんなことを泣きながらずっと言ってた気がする。

慰めてくれている島田さんに対しても、自分が情けないばっかりに心配かけて、こうして困らせてしまってと、更に情けなくなって涙が溢れてもっと島田さんを困らせて…。
ぐるぐるぐるぐる負のスパイラル思考を全部島田さんに曝け出して、本当に鬱陶しかったと思うのに、それでも島田さんは最後の最後まで優しく私の話を聞いてくれた。


私が落ち着くまで背中をトントンしてくれて、『大丈夫、誰も名前さんを迷惑だなんて思ってませんよ、大丈夫。』と、まるでお母さんのような安心感を私に与えてくれた。



帰る前に近藤さんの元へ今日一日の報告やお礼を言いに理事長室へ向かう時も、『大丈夫ですよ』と励ましてくれた。

理事長室に入れば、近藤さんにはすぐに泣いていたことがバレて、また人に心配をかけてしまったとマイナス思考。

私たちの存在が授業の妨げになってしまっているんじゃないかという事や、お弁当の購入時についての様子も話した。

私たちの話を聞いて、近藤さんも少し困った顔をして掌を頬にあてて「そうねぇ…」なんて、さすがの近藤さんも少し考え込んでいるようだった。

とりあえず、授業の妨げになってしまっていることについての解決策にはならないけれど、せめてお弁当の販売に関して、さっき土方さんが言っていたように先生方の購入方法と同じように予約制にしてみてはどうかと草案を残して私たちは学校を後にした。





会社に帰ると今日の売上データをPOS管理している女性事務員が、その売上内容にかなり喜んでいて、この時間帯凄かったわね!とか、何が幾つ売れたとかすぐにデータを出してくれた。

そのデータを社内メールで本社にいる大鳥部長に送ると、程なくしてメール確認をしてくれた大鳥部長から電話が入った。

初日にして用意したフードメニュー全てを売り切って戻ってきたことを凄く評価してくれたようで、電話口で対応している島田さんもとても達成感に満ちた表情だった。
けれど、近藤さんに話してきた内容を伝えると、やっぱり電話の向こうの大鳥部長も口調を濁らせてしまったようだった。


受話器を耳に当てる島田さんの横に座り、その表情を伺いながら島田さんの声だけを聞く私には、大鳥部長が何を言っているのかは聞こえないけれど、きっと近藤さんが言っていたのと同じことをいっているんだと思う。



まだ初めて間もない事だし、すぐに結論を出すことじゃないって…。

初めは物珍しさに生徒たちも落ち着かないだろうけど、すぐに慣れて、私たちの存在がそこにあるのが当たり前になるから…、って。



本当にそうなってくれたらいいけど…、
そうなるまでの間、やっぱりそれは学校にとって迷惑だと思う人も中にはいるわけで。
全ての人に受け入れられることなんてまずあり得ないとは思うけど…、



……、わかってることなのに、

どうしてこんなに胸が痛むんだろう…。



土方さんの声が、
ずっと胸に突き刺さるように残っているみたいで苦しかった。




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