僕のおねえさん

□31.
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午後からは、…と言っても学校の午後の授業が始まるのが一時半を過ぎてからだから、ちょうどお昼ごはんを食べて家の片付けも終わったような主婦のグループとか、幼稚園のお迎えから帰って来た親子連れのお客様がポツポツと来店するようになった。

フードメニューは学校関係で全て売り切っちゃったけれど、ここからは島田さんのスイーツが飛ぶように売れて行く。
それに合わせてドリンクも…。
テラスでゆっくりして行ってくださるお客様も初日にしては結構あって、私の得意のラテアートをすごく喜んでくださるお客様もいて、「次はお友達も一緒に連れてくるわ!」と約束までしてくれた。

こうして怒涛の一日目は過ぎて行き、午後の授業も終わりに近づいてきた頃、私たちは後片付けを始める。

テラス席やゴミ箱の撤去作業を島田さんと協力してやればあっという間に普通の学校の正門に元通り。

まるでイベントが終わった後のような、そんな感傷的な気持ちで辺り一帯をぼんやりと見ていると、「名前さん…」と気遣わし気な声で島田さんが隣に立った。



「なんだか元気がないようですが…、どうかしましたか?」



首を傾けて私の顔を覗き込んでくる島田さんの表情に、あぁ、また私、心配かけて…、と情けなくなる。

島田さんはほんとに優しいから、いつだって私の事を気にかけてくれて心配してくれる。

その気持ちは本当に嬉しいしありがたいけれど、今、こうして夢の一歩を踏み出して、本当だったら二人で「大盛況でしたね!」ってお客様の笑顔を思い出したり、時間帯によってどう動くかとか、今日一日を振り返って今後の対策なんか話し合わなきゃいけないのに…、

今の私の頭の中は、土方さんに言われた「迷惑だ」というひとことばかりが占拠していて、どうしてこう自分は人に迷惑とか心配ばかりかけてしまうんだろうって…。
そんな事ばっかり考えているから、マイナスの感情が顔に出ちゃって、更に優しい人に心配かけちゃうんだ…。

そう思い始めると、私のネガティブ思考はぐんぐん加速して口数も減って俯いて…。

なのにこんな私に島田さんはいつも優しくて。
ただでさえ背を屈めて覗き込んでいるのに、私が俯くから…、
優しい島田さんはもっともっと心配そうに眉毛を下げて膝まで曲げて私の顔をのぞきこむ。

困らせちゃってるってわかってるのに、私の弱い心臓は、優しくされるほど震えてどんどん弱さを表に出してしまう。



「私…、どうしたらいいんでしょうか…?」



俯いたまま、心のままに言葉が口をつく。



「え?」



突然ぼそりと呟いた私に一体なんのことかと目を丸くして首を傾げる島田さんにパッと顔を向ける。



「私…、私、人に迷惑や心配ばかり掛けて…、どうしたらいいのか…」



ダメだ…。
島田さんが優しいのわかってて、こんな風に弱音を吐くなんて…。


ジワリと滲む目を見られないようにさっと顔を伏せてグッと唇を噛みしめると、背をかがめていた島田さんがスッと体を起こしたのがわかった。
そしてすぐに大きくて厚い掌が私の頭をポンポンと二回弾んだ。



「…どうして急にそんな事を…、一体何があってそう思ってしまったのか、聞かせてもらえますか?」



島田さんの太くて優しい声が頭上からふわりと降りてきて、正面を見上げてみれば私の肩と頭の上に手を置いた島田さんが困ったように優しく微笑んでくれていて、
その顔を見てしまうと、私の涙は言うことも聞かずにぽろぽろぽろぽろ溢れ出して頬を伝っていった。
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