僕のおねえさん

□19.
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近藤さんがじっくりオーブンで焼き上げてくれたローストチキンはものすごい大人気であっという間に完食!
はじめ君オリジナルの焼きそばも、サッパリとした味付けでいくら食べてもまだまだおかわりしたいくらい最高に美味しくて、
あんなに山盛りだったお肉も唐揚げも何もかもがきれいにみんなの胃袋に収まっていた。



「かぁ〜っ!食ったな〜!」

「しんぱっつぁん、腹出過ぎ。オヤジじゃん!」

「うぅっせぇ!今食っとかなきゃこんなご馳走、次いつ食えるかわかんねぇだろぉ!?」

「にしても食い過ぎだ。普段食わねぇもん一気に食って、腹こわすんじゃ元も子もねぇぞ?」

「壊すかっ!?」



この三人のやり取りは本当におかしくて、見ていて飽きないし、何より居心地がいい。
あんなに知らない男の人は怖いって思い込んでた自分が嘘みたいで、
ほんの数時間しか経っていないというのに今ではみんなと一緒になって笑っている。



「やっぱ限られた人生の中で飯食う回数も決まってんだから、うまいもんを心ゆくまで食わなきゃ損だろっ!」



人生楽しんだもん勝ちってなもんだ!とふんぞり返って大きな声で言い張る永倉さんに「だな!」と笑顔で答える原田先生。
だけどふと何かを思い出したのか、笑顔が急降下するように目を伏せ大きくため息をつくと永倉さんは嘆くようにため息をついた。



「でもよ、この理屈で言うと俺たち何回貴重な昼飯回数損したことか…」

「そうだな…。ここ最近はほんと酷かったからな…」



永倉さんのテンションに合わせるように原田先生もウンザリとため息をつく。
この二人ってタイプは全く違うけど、ほんとに息ピッタリで、ほんとに仲が良いんだと実感する。

そんな二人にふふふっと近藤さんが笑って「何言ってんのよ」と手首のスナップを効かせて永倉さんの剥き出しの肩をパシッと叩く。



「その問題ならもう解決したじゃない!」

「まぁそうなんだけどよ。過ぎた分は取り戻せないっつーかさ…」

「もぉ!男がぐじぐじ過ぎたこと言うなんて情けないわよっ!明日から美味しいランチが食べられるんだから!楽しみにしてなさいな!」



そう言ってもう一度バシッといい音を立ててよいしょと、まとめた食器を持って立ち上がる。



「さ、そろそろ片付けて、お楽しみのケーキタイムよ!」



嬉しそうにウインクして言う近藤さん。

それに合わせて私も目の前の紙皿や割り箸を集めて立ち上がろうとすると、「いい、いい!名前ちゃんは座ってて!」と止められてしまう。



「え…?」

「名前ちゃんは最初の準備してくれたでしょ?だから片付けは免除ね。」



ゆっくり座ってて!と言って浮いた腰を降ろすように肩をポンポンと叩いてそのままキッチンへと行ってしまった。もちろんママから離れられないお年頃のたまちゃんも一緒に。



「食った分はしっかり働かなきゃな!おら、新八、平助、千鶴も行くぞ」



順番にみんなの頭をポンポンと軽く叩いて原田先生も近藤さんの後に続くと「いってぇ〜」と悪態付きながらも持てるだけ持って「いこ〜ぜ千鶴」と千鶴ちゃんの持った分に目配せして「大丈夫か?」と気遣いながら二人並んで行く平助くんと千鶴ちゃん。



「ほんじゃ、俺も行きますか!名前ちゃん、ちょっくら待っててくれよっ!」



ニカっと満面の笑みを見せて机に残ったお皿やコップを根こそぎ持って行く永倉さんに「はい、ありがとうございます」と応えると縁側に残ったのは私と総ちゃん、それから近藤先生とはじめ君。
それと土方さん。



「あれ。土方さんも片付け当番でしょ。行かなくていいんですか?」



総ちゃんに視線を向けられた土方さんはふうっと息を吐くと「言われなくてもやるよ」と目を伏せて立ち上がる。

机の上にまだ残っているおしぼりや割り箸をかき集めて、庭に設置したテーブルセットの方にも降りて片付けに行く。



「俺も手伝います」



土方さんに続いてはじめ君も縁側から腰をあげて後に続いて片付け始める。



「はじめ君は土方さん命だからねぇ」



なんて呆れながらも楽しそうに言う総ちゃんだったけど、



「それじゃあ俺もこっちを片付けようか」



と、みんながそれぞれ散り散りに動き始めたのを見て、じっとしていられなくなった近藤先生がオーブンの網を取り外して庭の奥の立水栓へと向かうと、「僕も手伝います!」と言ってバーベキューコンロの網を外して跳ねるように近藤先生と並んで行ってしまった。



「…え…、あ、っと…、えっと…」


気が付けばあっという間に私一人で、机の上を見回してももう何も残ってなくて、自分一人落ち着いて座ってなんかいられずオタオタとしていると、テーブルセットに残っていた物を持ってはじめ君が縁側へ上がる。



「ゆっくりしていてください」



しっかりと目を合わせてビシッと言うはじめ君の凛とした佇まいに「は…!はぃ……」と気持ち後退りして答えるしかできない…。



えぇっと…、



ゆっくりしていてくださいって言われても…、
なにこのポツン状態…。
まだ一人で片付け命じられた方がマシっていうか…、この手持ち無沙汰な感じが逆に居た堪れなくないですか…?


う〜〜〜っとしかめっ面になって視線を庭へ向けるとはたっと感じる視線とかち合う。



「っ!?」



目が合った瞬間また息を飲んで固まってしまった私に、さっきまで笑っていたようだった土方さんはふいっと視線を逸らしてテーブルセットをテキパキと畳んで行く。


わ…、笑ってた…。

笑われてた……!
なんでっ!?


よくわかんないけどすごく恥ずかしくなってじっとしてられなくてあちこちに視線を彷徨わせると、ある一点を捉えた私は縁側から足を降ろしてサンダルに足を入れると庭へ降りた。

すっかり完食されてきれいに何も残っていない、焼きそばを作っていた鉄板。
これも総ちゃんと近藤先生がいる立水栓に持って行こう。
そう思って、鉄板の上に置きっぱなしになっていたステンレス製のヘラを手に取る。

「熱っ!?」

「!?」

気がつかなかったけど、鉄板の下の炭はまだ小さく赤く燻っていて、しっかり消火されていなかったみたい。
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