僕のおねえさん

□17.
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「名前ちゃん?」



ツネさんの呼びかけにも、その声が聞こえていない訳でもないはずなのに、そこにいる女は目を見開いたまま、俺の顔を驚いた表情で見つめたまま固まって動かない。

俺も数秒の間は同じような状態だったが、女の隣に座る新八の動きや、その正面に立つ原田の俺に向ける視線、
それから総司の「名前ちゃん?」という声に我に返る。



「名前ちゃん?どうかしたの?」



ツネさんの問いかけに女も漸く我に返ったようだったが、その表情は硬く、みるみるうちに顔色が悪くなっていく。



「名前ちゃんっ!?どうしたのっ!?」

「っ…!そ、総ちゃん…、……、大丈夫、なんでもないよ…」



縁側に腰掛けていた総司が素早く女の傍に寄り添うように移動し、両肩を掴むと、震える声で言葉を返して弱々しい笑顔を作る。



「あ…、あの私、これしまってきます。ホントなんでもないので気にしないでください。」



「ちょっと自律神経がふわふわしたみたい」と申し訳なさそうに苦笑いを浮かべ、左手で胸元を抑えながら立ち上がると、ツネさんからケーキを受け取り道場の奥へと消えて行った。



「いきなりどうしたんだ?」

「名前ちゃん、大丈夫かしら…」



隣に座っていた新八とツネさんは顔を見合わせ心配げに道場の奥を振り返り、原田も無言で同じように道場の奥の廊下へと視線を送る。



「僕、ちょっと見てきます」



立ち上がった総司を全員が見上げると、「きっと土方さんの顔を見たら気持ち悪くなっちゃったんですよ」と戯けた笑顔でニコッといつものように笑い、手をひらひらとさせながら、「皆さんは続けて楽しんでて下さいよ」と言いながら奥へと消えて行った。



「なっ…、」



総司の捨てゼリフに言葉を返すこともできずに思わず喉を詰まらせてしまうと、



「……まぁ〜…、いきなりこんな厳つい顔したにいちゃんがケーキ抱えて嬉しそうに登場すりゃあ……、気持ち悪ぃよな…」



ハハっと乾いた笑を漏らしつつ悪びれた様子もなく言う新八。



「っ!?なんだと新八っ!」

「まぁまぁ、落ち着けって。新八も言い過ぎだぞ?」

「ジョーダンだっつーの」



ははは!と二人して笑いやがって…。バカにしてんのか?くそっ!

……、しかし…、
あの女は…、



「さ、歳三くんも座って?ずっと立ちっぱなしだったんでしょ?」

「あ?…あ、あぁ。」



さっきの女が座っていた位置に娘を移動させツネさんが空けてくれたスペースに腰掛ける。



「あの子、総司くんのおねえさん。名前ちゃんって言うのよ」



俺の手元のにおしぼりを置くツネさん。



「総司の…、?」



総司の姉貴って…、
確か数日前に駅前の公園で会ったあの女だとばかり思っていたが…。
あの時の女とは髪型がまるで違うから全然気がつかなかった…。

言われてみれば、さっき俺の視界を捉えたあの瞳の色は、確かに総司のものと同じ色彩を放っていた。
驚いた表情も、前髪の印象で随分違うが、大きく丸く見開いた瞳はあの夜のものと同じだった。

初めこそパニック状態で話せる状態じゃなかったが、帰る頃には俺の冗談に笑うほどで、別れ際にも笑顔を見せていたはずなのに…。

そういえば……、
あの日も最初に俺の顔を見た途端、突然悲鳴をあげるほどだったな…。

なんだ?
俺の顔に何かトラウマでもあるってのか…?

わからねぇ…。
あの時が初対面のはずなのに…。
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