僕のおねえさん

□16.
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「いやぁ〜!それにしてもこんな偶然があるんだなぁっ!」



さっき総ちゃんに焼きそば用のヘラの角で頭のてっぺんを後ろから不意打ちされた永倉さんはスッカリ立ち直り、縁側に腰かけて、台所で調理して来たお料理を頬張り、私はその横に座るようにしっかりとガードされていた。

こんなに近くに座られて、こんなに大きな声で話されて、初めは本当にこのまま食べられちゃうんじゃないかと思うくらいの、熊のような迫力に怯えてしまったけれど、原田先生が永倉さんに注意してくれて、「こんな奴だが、意外と奥手だからそんなにビビってやるな」とやんわり言われたので、私もそこでとても失礼な態度だったなと思って謝るというやり取りをしていた。



「あの時はせっかく助けていただいたのに、キチンとお礼も言えなくて…、本当にすいませんでした。」



永倉さんの前に置いてあるジョッキにビールを注いでから、永倉さんとその前に腕を組んで立つ原田先生に頭を下げると、



「ははっ!いいって事よぉ!あんなとこ目撃して放っておくなんてできるわけネェしな!男として当たり前の事をしたまでよ!なぁ、左之!?」

「あぁ、それにそういう時は『すいません』じゃなくて『ありがとう』って言ってもらいてぇもんだな」

「あっ…!すっ、すいませんっ!ありがとうございます!」



ガハハと笑う永倉さんとフッと目尻を下げて優しく微笑む原田先生に慌ててお礼を言うと、二人とも笑顔を一瞬にして真顔に変えて顔を見合わせ、それからまた二人同時に大きな声で笑い出した。



「名前ちゃん、あんた本当におもしろいなっ!気に入ったぜ!」

「えっ…、えぇ!?」

「ほんと、総司の姉貴とは思えねぇキャラだな」

「え???」

「そうそう!同じ家で育った姉弟とは思えねぇ!」



ガハハと大きな口で笑う永倉さんと眉を下げて困ったような顔で笑う原田先生を目の前に、もうどうしたらいいのか対処の仕方もわからず困っていると、どこからともなくヒヤリとした空気が漂う…。



「原田先生、新八先生…、それどういう意味で言ったのかな?」



声のした方を見上げると二人の間から怪しく微笑みながら顔を覗かせる総ちゃん。



「っ!?そ、総司…、」

「ぉおおおお!?総司っ!?いきなり怖いぞっ!?」

「ふふふ…、二人とも楽しそうに笑っているけど、あんまり名前ちゃんにひっつかないでくださいよ。名前ちゃんも、いつまでもこんな二人の相手なんてしてなくていいんだからね」



そう言ってトウモロコシを手に取り永倉さんの横に腰掛ける。



「おいおい、こんな二人とはご挨拶だな!」

「あはは。ただの言葉の綾ですよ。そんな細かい事気にしてたら誰かさんみたいにハゲちゃいますよ?」

「っんな!?誰がハゲるって!!?」



隣同士腰掛けてやいのやいのと言い合う二人をちょっとヒキ気味に見ているとテーブルに手をついて顔を近づけてくる原田さんの動きに気が付いてドキッとする。



「あの時と髪型が違うから最初は気付かなかったが…、その瞳。あの時も思ったが、総司と同じ色してんだな」



柔らかい表情の微笑みで瞳の奥をジッと見つめられてそう言われると、どう返していいのか言葉が見つからない。

私の視界には、まっすぐ目の前にある琥珀色の双眼に写る自分の顔しか見えない。



「綺麗だな」



ジッと見つめられて、静かに真正面から囁かれて、原田先生の瞳に映る私の顔はみるみる真っ赤に染まっていく。

そんな私の目の前でフッと鼻から軽く息をついて原田先生が微笑んだと同時に「あぁあーっ!やぁっと来たー!」という大きな声で、はっと呪縛が解けたみたいに原田先生の瞳に映る自分しか見えなかった視界が一気に広がって、もとの試衞館道場の世界に引き戻された。



今の……、



今のが俗にいう『瞳に吸い込まれる』っていう現象……?


言葉ではよく聞くような表現方法だと思っていたけど…、

ほんとにあるんだ……。
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