僕のおねえさん
□6.
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☆★総ちゃんの放課後、私の終業後★☆
放課後、部活もないのに僕はなぜかはじめくんに捕まって、ここ、風紀委員の居城とするなんだか辛気臭い理科実験室に監禁されていた。
「ちょっとはじめくん。いきなり連れてこられても困るんだけど。」
理科実験室の大きな作業台の前に座らされて、目の前に座ったはじめくんは、カバンからガサゴソと何かを取り出してはじめようとしている。
「うるさい。実際困っているのはこちらの方だ。これから毎月風紀委員の失点ポイント最多数保持者には罰として失点ポイントの集計に付き合ってもらうことになった故、あんたを帰す訳にはいかんのだ」
「えぇ〜、なにそれ。そんなの去年はなかったじゃない。誰が決めたの?聞いてないんだけど。いきなり言われても困るんだけど。放課後はプライベートの時間なんですけど。」
「うるさい。文句があるならば来月から心を改め失点無きよう清く真面目に学園生活を送ればいいだけの話だ。」
「えぇえ〜」
もう、はじめくんの発言は真面目すぎて、聞いてるだけでうんざりしてくる。
机にうなだれていると目の前に藁半紙がバッさーっと滑りよってきて、危うく僕の澄んだ瞳に藁半紙の角が突き刺さるところだったよ。
「そこに日付順に失点者の名前と失点ポイントが書いてある。それをこちらの紙に失点者毎に分けて書き出してくれ。」
「えぇえ〜!なにそれ、すっごい面倒。こんなの貯めとかないで毎日パソコンに入力しておけば簡単じゃない。はじめくんともあろうお方がなんて原始的な事してんのさ」
「うるさい。黙ってやれ。パソコンなど贅沢なものを一委員会のために用意してもらうなど、申請する方が時間の無駄だ。それに毎日このような作業をしていたら俺の部活動の時間を割いてしまう。俺とて一人の生徒として部活動に専念する時間があって当然だろう。」
僕に目もくれずに藁半紙の束をペラペラ捲って順番の確認をしながら答えるはじめくん。
「えー、じゃあ、あの子は?今月から毎朝キミの横でちょろまか鬱陶しいあの小さい子。名前なんだっけ?」
なんか知らないけどやたら僕に敵対心を剥き出しにしてくるわけのわからない子を思い浮かべて言うと「はぁ」、とため息をついてその子の名前を吐き出すように答える。
「…南雲の事か…」
「あー、多分そう。なんでその子いないの。はじめくんが一人でこんなめんどくさいことやってるってのに来ないだなんて、随分ナメられてるんじゃない?」
そういうとはじめくんはまたため息をつく。
「南雲は南雲で毎日登校時以外はやることがあるのだ。」
「へぇ〜、どんなこと?」
「この学園で唯一の女子の学園生活を円滑に、不道徳な事など無きよう監視するという仕事を自ら買って出たのだ。今頃は雪村が無事家についたのを見届けている頃だろう」
え、なにそれ。
完全に個人的趣味じゃないの?
「てゆうかそれって、所謂ストーカー行為っていうんじゃないの…?しかもはじめくん、さもそれが当たり前の業務のようにサラッと言ったけど『自ら買って出た』って、はじめくんうまいこと騙されてるの気づいてないよね。」
「なっ!?」
「それでその子、その業務が終わったらちゃんとここに戻ってくるの?業務なんだったらちゃんと報告する義務があるでしょ?」
「そ…、それは…」
「なに?もしかして直帰?はじめくんはまじめにこんな地味で根気のいる、やったからって誰が得するでもない作業をやってるってのに?」
「う、うるさいぞ!無駄口を叩いていないでさっさと終わらせるぞ!」
あ〜、はじめくんが声をあげるほど怒るだなんて、珍しいこともあるもんだ。
これ以上怒らせてもいいことないし、チャッちゃとやって早く帰ろ〜。