僕のおねえさん

□5.
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☆★お弁当問題は理事長にお任せっ!★☆QLOOKアクセス解析





「ったく…!なんだってあいつぁ今回も俺の教科以外全部満点取ってやがるんだ!?」



新学期の実力テストの結果一覧表の束をバサっと机の上に置いて、去年一年間を通して何度同じことを言ったかわからないが、とにかく毎度お馴染みのセリフを吐く。



「ったく…、毎度毎度飽きもせず赤点取りやがって…。そのくせ赤点対象者の追試になんか一度だって出た試しがねぇ。毎度毎度追いかけ回すこっちの身にもなりやがれってんだ。無駄な体力使わせやがって…」

「ぉお?なんだよなんだよ土方さん!昼間っからブツブツブツブツ念仏なんか唱えてよぉ!」

「あ"ぁん?!」

「ぅわおっかねぇ!」



振り向いた俺の顔を見てビビる新八は両手で弁当箱を高く掲げて飛び上がる。
その横で二人分の弁当箱を持った原田が俺の目の前にそのうちの一つを差し出す。



「はは、ほらよ土方さん、あんたの分だ。何イラついてんだかしらねぇけどよ、腹が減ってるからイライラするんだよ。ほらさっさと食っちまおうぜ」

「あ…、あぁ、すまねぇな…」



目の前の弁当箱を受け取り机の上に広がった書類を除けて置く。



「ったくそれにしてもまぁた揚げもんだよ!最近どうしちまったってんだよ〜」



弁当箱の蓋を開けるなり隣の島に座る新八がこちらに背中を向けたまま呆れた声で嘆き出す。

その声に俺も蓋を開けてウンザリする。
今日の弁当の内容は、いつもと同じひじきの煮物に出し巻き卵。それにメインのおかずは大量に刻まれたキャベツの上にドンと乗せられた、やたらどでかい魚の…、フライ?……竜田揚げ?いや、素揚げか…。

まぁとにかくただ揚げただけの物体がキャベツと白米の境界線を跨って弁当箱を対角線上に鎮座していた。



「もうこれで何日連続だってんだよ!油で揚げただけ弁当っ!!」



のぉおお!

と雄叫びをあげながら両手でバンダナを巻いた頭を掻きむしる新八。
まぁ気持ちはわかる。
ちなみに昨日のおかずは鶏の唐揚げかと思いきや、豚バラスライスを丸めた肉の塊をやはり油で揚げただけのものが、今日と同じように大量の雑に刻まれたキャベツの上にごろっと乗っけられていた。



「流石にこう毎日油もんは胃に堪えるな…」



俺の目の前に座る原田も苦笑いで腹をさする。

この仕出し弁当を毎日注文した分だけ昼休みに間に合うように持ってきてくれるのは、この学園の裏門からほど近い場所に店を構える昔ながらの小さな喫茶店で、この学園が創立して以来ずっと世話になっている。

もうかれこれ数年来の付き合いになるが、ここ最近は毎日同じような偏ったメニューで、誰が見てもレパートリーが減ったと文句を言われても仕方のない出来だ。

そんなこともあって、 最近では弁当を注文する教師も激減している状況。

まぁ…、みるからに、見た目も食った後の胃もたれも想像以上に重くて、毎回食った後に後悔するくらいだから仕方ないっちゃしょうがねぇんだがな。

コレが嫌なやつは弁当を作って持ってきたり、登校前にコンビニで買ってきたりまちまちなんだが…。

文句を言いつつもそれをしない俺を含めた他の奴らはよっぽどの変わりもんだな…。



「毎日毎日こんなもん食ってたら、胃に穴が空いちまうぜ!」



既にカラになった弁当箱にからんと割り箸を放り込み爪楊枝を咥えて椅子に反対向きに跨った新八が椅子の背もたれを抱え込んで愚痴り出す。



「あー、俺にも昨日の総司みたいな弁当作ってくれるかわい子ちゃん、どっかにいねぇかなぁ!」

「?」

「あぁあ。あれはマジでうまそうだったな。あの総司がひとくち食って『おいしい』って固まってたもんな」



総司が弁当だと?
確かあいつはいつも菓子パンばかり食ってたと思ったが…。
去年の一年間を通して、弁当なんて、ただの一度も持ってきた事なんかなかったように思う。
しかも昨日の斎藤の話だと、あいつの両親は不在で今家には総司しかいないってなコト言っていたはず…。

総司が弁当なんて、一体どういう事だと口を開こうとした瞬間、背後から近藤さんが呼びかけてきた。



「トシ、トシ、すまん、食事中すまないんだが、ちょっとこれを見てくれないか?」



そう言って近藤さんが差し出したのは、クラシックなワーゲンバスを中心にそこから広がるオープンカフェの写真が写るチラシ。
裏を返せば、メニュー表になっていて数種類の写真もセンス良く掲載されている。



「移動カフェ?」

「ランチの移動販売?」

「おぉおおお!なんだよコレ!?うまそーじゃねぇか!!」



椅子を跨いだ状態でばっと立ち上がり、職員室全体に響き渡るほどの雄叫びをあげる新八。



「これがどうしたって?」

「いや、実は昨日の晩、ツネがこのチラシを持って来てな、知人が始めたこの事業にどうにか協力することはできないだろうかと相談を持ちかけられてだな…。」



そう言って再度、全員でチラシを覗き込んだ。
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