平助の母親
□80.
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☆★ダークフォース総司が盛り上げ、そして放置されるはじめくん★☆
「さぁさあ、皆さんおまちかね!プリンセスの登場ですよ!」
声高らかに手を叩きながらわたしの前を行く山南部長の声に、ショールームで待っていたスタッフ全員がそれまでのざわめきを止めて一斉にこちらを向く。
「ちょっ!?山南部長!もぉ!そうゆうのやめてくださいぃ!」
プリンセスとか何言っちゃってるのもぉ〜!
思わず部長相手に大声を出してしまうと「おぉお!」と地響きのようなどよめきがショールーム全体に響き渡る。
その迫力に驚いて目を見開いてその先を見れば、ものスッゴい勢いで永倉さんを先頭に大きな男性陣がこちらに向かって駆け寄ってくる。
「う…、あ…、わわ…」
あっという間に囲まれてその圧倒されるほどの迫力に思わず山南部長の腕にしがみついてしまう。
「おやおや、ふふ…、皆さん、ちょっと怖いですよ」
にっこりと微笑む山南部長。
部長の言葉にそこにいる全員の顔が一瞬『いや、あんたにゃ敵わねぇよ』と物語る。
「まぁまぁ、みんな、それより見ろよ。どうだこれ!」
後ろから来ていた原田さんがむき出しの肩にシフォンのストールをかけただけのわたしの二の腕をガシッと掴んで山南部長の
腕から私をべりっと剥がして前へと押し出す。
原田さんが触れる二の腕をみんながぎょっと目を見開いて凝視する。
「こっ!こぉら左之ぉ!てめぇ何どさくさに紛れて名前ちゃんの二のっ…!二の腕っ…を!」
顔を真っ赤にさせて原田さんに掴みかかろうと凄い勢いで目の前まで飛んできた永倉さんだったけど、原田さんの前にいるわたしを挟むような状態になり、ほぼ真上からわたしを見下ろすと更に真っ赤っかな顔でガチガチに固まってしまった。
「おぃおい、新八。どこ覗いてんだよ、やらしーな」
そんな永倉さんをからかうように笑う原田さんの言葉に永倉さんだけじゃなく、わたしまで恥ずかしくなってしまう。
夏でもスーツ着用のこの職場で、こんなに肌を露出させるなんて……。
改めて自分の格好がこの場に合ってないことに気が付いて、こんなにたくさんの男の人の前にいるのがものすごく恥ずかしい!
「わ…、わたし……、もういいですよねっ!?」
ストールをキュッと胸の前で握りしめて身を縮めて言ったその時、突然自動ドアが開く音が聞こえ全員がそちらへ視線を向けるにも関わらず入ってきた人物は歓声をあげて駆け寄ってきて、再びショールームが賑やかな雰囲気に変わる。
「名前ちゃん!」
「お、沖田くん!?」
スタッフの垣根をずんずんかき分けわたしの目の前まできた沖田君はストールを握るわたしの手を両手で取ってくる〜っと二人でコーヒーカップに乗っているように回転する。
「うわぁー可愛いなぁ!いつものスーツもいいけどやっぱり名前ちゃんにはふんわりしたイメージのが合ってるよ!かぁわいいなぁ!」
一回転した後、繋いでいた両手をわたしの肩に置いてそう言うと思いっきり力強くぎゅぅっと抱き締められる。
「っ!!」
わたしだけじゃなくその場にいた全員が息を飲んで目を見開く。
「ぅぇえっっ!!?おおおお沖田くん!?」
驚いて顔をあげようとするけどぎゅっと抱き締める力が強いのか身動ぎすらできなくてただただ沖田くんの胸元しか見えない視界で慌てることしかできない。
「やめないか総司」
わたしを抱き締める沖田くんの向こう側から凛とした低く落ちついた声がしたと同時に沖田くんの左肩が後ろへ引かれる。
だけど沖田くんの腕が緩められることはなく引かれた肩の動きのままにわたしまで前のめりになって倒れ込みそうになってしまう。
「きゃ…!」
足がもつれてバランスを崩したわたしは全身を沖田くんに預ける形になって思わずぎゅっと沖田くんの胸元のシャツを握りしめた。
すると
「あ〜もぉ!ほんとに可愛いなぁっ!」
と余計に強く抱き締められてしまった。
「総司!」
「おいおぃ…、いい加減にしろよ」
バリバリっと沖田くんから引き剥がされてやっと視界が広がると、目の前には沖田くんとその後ろには一くん。
わたしの肩を掴んで沖田くんから引き剥がしてくれた人を振り返って見上げればそこにはやっぱり原田さん。