平助の母親

□79.
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☆★ドレス完成!試着です。★☆QLOOKアクセス解析





平助の期末テストもすっかり全部返ってきて、残り数日登校すれば夏休み。
季節はすっかり晴れ渡る夏空で肌を突き刺す日射しが眩しい毎日。

そんなある日の昼下がり、
六月の梅雨真っ最中に松平社長に作ってもらった超というか某有名ブランドのオートクチュールドレスがついについに!一ヶ月の時を経て完成し、遥々地球の裏側から数々の国境を超えて誠自動車本社へと届けられた。




「うぉお〜〜〜!こ、これを名前ちゃんが着るのかっ!?」



本社に届けられたブランド名の刻印が入った豪華な箱を二つ並べたショールームのカウンターにショールームのスタッフはもちろん、サービス工場のスタッフまで全員が勢揃いで囲う。



「ほらほら永倉くん、あなたが開けてどうするんです。ほら、皆さんも少し下がって」



大興奮で今にも箱に手を伸ばしそうな永倉さんににこやかな微笑みを湛えた山南部長が声をかけ、わたしと原田さんに前に出るように微笑みを向ける。



「さ、開けるのはあなた方ですよ。どうぞ」



カウンターの前まで進み出たわたしたちの前に大小それぞれの箱が差し出され、大きな箱に手をかけ、わたしにもそうするように視線を向ける原田さん。
向けられた視線に頷きわたしも同じように箱に手をかける。

みんなの視線が集まる箱をそっと開ければ柔らかなシフォンの包みに包まれたドレスが現れる。



「……、うわぁ……!」



カタログで見たデザインよりも柔らかなイメージで胸元の装飾もカタログにはなかった物が取り付けられている。
だけどキラキラ輝く装飾が施されていても、全然いやらしさは感じられずさりげなく上品な印象を与えるような胸元のデザインになっていて、

その美しさに思わず手が伸びてしまい、生地に触れるとハッと気付く。



「あ……、あれ…?」



目を見開いて山南部長へ視線を向ければ、うんうんと頷きにっこりと微笑む。



「気付きましたか?」



フフっと笑ってカウンターを挟んでわたしの前に来ると触れただけのわたしの手からドレスをスルッと持ち上げ顔の高さまで引き上げる。



「いかがですか?本物のシルク100%の手触りは?」



にっこりと自信満々の表情の山南部長はとても嬉しそうに笑う。



「え…、えと…、あの、確か選んだのはサテンの生地じゃ……」



あの時、ぼんやりとした記憶ではあるけれど、確かにとしくんが選んだのはサテンの生地だったと思う。
光の加減できれいな薄い水色に見えるのはあの時のサンプルと今目の前にあるドレスの生地と同じくらい綺麗だけれど、手触りが全く比べ物にならないくらいに全然違う。
戸惑うわたしに山南部長が声をかける。



「何かご不満でも?」



顔の高さまで上げたドレスを胸の位置まで下げて首をかしげる山南部長に慌てて首と両手を振って否定する。



「ふ!不満だなんてそんな!?」



慌てる私を見てにっこりと笑うとドレスを箱にしまい、

「それならよかったです。さっそく着替えてみてください」

と箱ごと持ち上げるとわたしに押し付けるように渡してくる。



「えっ!?あ…!今ですかっ!?」



押し付けられて思わず受け取り、山南部長に聞き返す。



「えぇ、今ですよ?試着してみて直すところがあれば早急に直さねばならないでしょう?まぁ、あれだけしっかりと採寸させていただいたので、よっぽどの事がない限りそんな必要はないとは思いますけれど…?」



少しだけ顎を上げて目を細めた視線をわたしに向けて上から下へと視線を滑らす。



「うっ……」



何も返す言葉もなく箱を持ったまま立ち竦む。



「ま、サイズ的には問題なくても、実際着たところを見てみたいからな。ほら、行ってこいよ」



原田さんに背中をぽんっと押されてロッカールームへと送り出される。



「あ…、あのでも……、」



眉を下げて肩越しに原田さんを見上げれば、「ん?」と口端を上げた笑みを浮かべて首をかしげる原田さん。



「どうした?手伝ってほしいのか?」

「ちっ!?違っ!…違いますっ!」

「ははっ、ならさっさと着替えてこいよ。誰も覗きゃしねぇよ」



軽くあしらわれてロッカールームの扉を開けた原田さんにまたぽんっと背中を押されて一人ロッカールームに押し込まれてしまった…。
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