平助の母親

□78.
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狭い車の中で、ただ名前の体を抱き締めて、名前の首筋に顔を埋めているだけで心が安らぐ。

名前の肌から発せられる香りを、
その柔らかで触れれば吸い付いてしまうような肌理の整った肌の感触を自分の頬と鼻先で感じ、普段メールや通話だけのまるでバーチャルな付き合いのようにさえ感じる名前の存在を、
その温もりだけで、やはりこれは現実の…、
実在する愛しい存在である事を確かめる。


名前の柔らかさと温もりを感じるだけでこんなに安らぎを感じて離れることができないなんてな…。
こんな姿、絶対他の奴等に見られる訳にはいかねぇな…。


だが、俺にとって名前の存在はこれほどまでに
俺の日頃張りつめた生活で凝り固まった心と体を癒してくれる…。
本人にその意志がないにも関わらず…。
ホントに大したヤツだ…。


普段一緒に過ごす時間がないからか、離れている時間に比例して会えたときに感じる愛しさが増幅するのであれば、いずれ訪れる二人だけで過ごすという未来の約束が叶った時にはどうなっているのだろうか…。


名前の肌に乗せる閉じた瞼の裏で未だ見ぬ未来の俺たちの姿を思い描いてふっと笑みを含む息が漏れる。
先のことはどうだっていい。
会えない時間がどうだとかじゃねぇ。
俺は名前がいるから生きていける。
こいつが俺の傍で笑って、しゃべって、生きていてくれるというだけで、俺はどんな困難にも立ち向かっていける。
どんな重責にも耐えて背負っていくことができる。


そう思うから余計に早く名前を俺だけのものにしたいと思う。
仕事から帰ればそこに笑顔で待っていてくれる存在がある…。
その笑顔に毎日癒されまた仕事へと向かう。
そんな毎日を送る。そこに特別な会話なんか要らねぇ。
ただ同じ空間で同じ時を過ごしお互いの存在を感じあえる…、たったそれだけで充分なんだ。
平凡なように思える事だが、男にとってそれがどれだけ重要で必要なことなのか、
名前と出会って初めて本気でそう思った。

これが結婚に対する憧れというものなんだな…。
そんなもの…、ほんの数ヶ月前まで考えることさえ…、いや、頭の片隅にさえなかったことだ。
寧ろ、近藤さんを始め、世の男たちの結婚後の生活話を聞く限り態々結婚までして生涯一人の女に手綱を引かれる不様な生活、俺がするわけがねぇなんて思ってたくらいだ。
それなのに今は名前と暮らしたら…、なんて俺らしくもねぇ夢のような甘い生活を思い描いて名前を手離したくねぇなんて…、女々しいにも程がある。
俺と名前は他の男どもの結婚生活のような例には当てはまらねぇなんて根拠もねぇ妙な自信さえ湧いてくる始末だ。

相当重症な自分に呆れて笑っちまう…。


ふぅと大きく息を吐き、思う存分名前を堪能できた俺は名前の首筋から顔を上げ最後に名前の耳の下にキスをする。
俺が抱き締めている間、ずっと文句も言わずにおとなしく俺の胸に頭を預けてくれていた名前の顔を覗きこむと、思わず笑いを噴き出してしまう。


おとなしいはずだ。
俺がお前にどれだけ思い焦がれて抱き締めていたと思ってやがるんだ。
俺の胸の鼓動を聞くように右耳をしっかり密着させて眠るその表情はまるで安心しきった子供の寝顔そのもので、これが本当に俺より年上の女のする顔なのかと思わずにはいられねぇ。

そんな幼さ全開の名前に欲情を燃やす俺は一体どんな変態なんだ。
情けねぇような、少し苛立ちにも似た、
だが、混み上がるなんとも言えない愛しさのまま、握りつぶしてやりたくなるようなこの感情は俺の名前に対する愛情という言葉だけには収まりきらない気持ちの昂りなんだ。

その昂りをそのままに、眠る名前の唇に乗せる。
柔らかく、弾力のある唇の感触を、はじめは弾ませるように二三度つけ、それからその厚みを確かめるように自分の唇でその柔らかな唇を潰してしまわないように優しく挟む。
挟んでは離し、また挟む。
そうするうちにだんだん湿り気を増した唇は俺を中へと誘い始める。

静かに寝息をたてていた隙間から舌を忍び込ませるように名前の唇を舐めるように少しずつ差し込んで行くと、漸く目を覚ましたのか「ん…」と喉の奥から声を発する。
その声を聞いた俺の舌は直ぐ様名前の口内に侵入してあっという間に名前の舌を捕らえて絡み付く。



「ん!?ぅんん…!?」



驚き目を見開いた名前の瞳をニヤリと見下ろし、きつくきつく吸い上げる。
角度を変え絡めて吸い上げ、また絡める。
何度も何度も名前の口内奥深くへ挿し込み犯す俺の舌は逃げ惑う名前の舌に絡み付いて離れることを知らない。

薄く目を開けて見れば苦しそうに眉をひそめる名前の表情に、完了したはずの充電残量がまだまだ足りないと喚き出す。

まったくしょうがねぇヤツだ。

誰に対する呆れなのか…。
酸欠で苦しむ名前を離して助手席のシートへと返す。
逸る俺のなかの誰かさんの気持ちのままにシートベルトを外して助手席側へと体を翻す。
突然覆い被さってきた俺を目を見開いて驚き見上げる名前にニヤリと笑みを浮かべて見下ろし、


「悪いな。まだ足りねぇみたいだ」



右手で助手席のシートを全開に下げて名前の体にのし掛かる。



「えっ!?あっ!ちょ…!としくっ!」



いきなり天を仰ぐ姿勢にさせられた上に俺に跨がれて…。
驚くのも無理はないが、そのリアクションに笑ってしまう。



もう誰もこの車には乗せてやれねぇな…。


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