平助の母親

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六月も早いものでもう月末。



沖田くんの指導のもと?、二年生だけで編成されたチームで地区予選の決勝戦に挑んだのが先週の話。平助がバスケ部の部長になって三日後の土曜日。

たった三日の練習で、しかも公式戦は小学校の試合以来のメンバーで全員が一年以上のブランク。
そんなメンバーで挑むのはやっぱり決勝まで残ったというだけあってかなりの強豪チーム。

しかも相手は三年生の引退がかかっている大事な試合。
負けるわけにはいかないという気迫に圧され、前半はボロボロに…。
ハーフタイムで言われた沖田くんのお仕置き発言で目覚めたメンバーは後半、ものすごいチームプレイを発揮してついには同点、あとひといきというところで相手のキャプテンにスリーポイントを決められてしまい試合終了。

こうしてバスケ部の夏のインターハイへの扉は閉ざされ、一学期も残り僅かとなった七月。



三年生が実質上引退した形のバスケ部は正式な顧問の先生も決まらず、相変わらず沖田くんが放課後時折活動の様子を見に来る程度で、ほとんど自主トレのような毎日を送っているらしい。

成りゆきで部長になってしまった平助は毎日クラスメイトと練習に励み、それらしい活動はしてるらしいんだけど…。
やっぱり以前と比べてバスケ部全体に緩んだ空気が漂っているのは否めない。
期末テストが近づくにつれ、日に日に部活に参加する部員も減っていき、気が付けば期末テストの一週間前。

全ての部活動がお休みになって生徒たちはそれぞれテスト勉強に励む。
前回の中間テストでは千鶴ちゃんの協力のお陰でものすごい快進撃を見せた平助。

今回の期末テストでも、同じように全教科平均点以上を目指して千鶴ちゃんと二人、平助の部屋で勉強会。

だけど、
前回とは違って今の二人は恋人同士の関係で…。
やっぱり気になっちゃうのが親心ってやつなんですけどぉ〜〜〜!


ってなわけで突撃でーすっ!



「はいは〜い!お茶が入りましたよ〜!」



ガチャっと扉を開ければ仲良く肩を並べて参考書を覗きあう二人の背中。突然扉を開けて入ってきたわたしにビックリしてバネがビョンと弾けたように千鶴ちゃんから離れる平助と、「あ、名前さん、ありがとうございます!」と顔をあげてなんでもないように振り向く千鶴ちゃん。



「な!?なんだよかぁちゃん!入る前にノックぐらいしろよ!!!」



わぁわぁ真っ赤な顔で私を指差す平助を見て思わず顔がにやついてしまう。



「あーごめぇん!両手が塞がっててドアノブ回すので精一杯だったの〜!」



片手で持ってたお盆を丁寧に両手で持ち直して二人の横を通り越し、平助の学習デスクの上にお盆ごと置く。



「しっかり勉強しとるかな?」



ふんふんと二人の手元を覗きこんで言えばにっこり微笑む千鶴ちゃん。



「平助くん、頑張ってますよ。中間テストの時よりもいい点取れるかも!」



わたしにそう言って教えてくれた後、にっこり平助に笑顔を向けて千鶴ちゃんが言えば更にかぁぁっと顔を赤くして、慌てて立ち上がって私を扉まで背中を押して移動させ、



「そーいう訳だからいちいち様子なんか見に来なくていいから!ほらほら、邪魔だから出てけよっ!」



しっしと追い払われて部屋から追い出される。



「邪魔者扱い〜〜〜」



背後でバタンと閉められた扉に振り返って言えば、扉の向こうから「勉強の邪魔するくらいなら風呂入れ!」と怒られてしまった…。

うわぁーーーん!
母玉砕!
いいもんいいもん風呂入るもーん!
ふんだふんだふーーーんだと言いながら階段を降りて寝室のドアを開けようと手を伸ばしたところでリビングの奥からケータイの着信音が聞こえた。

あ!この着信音は…!
うきうき逸る気持ちのまま着信表示をスライドさせてケータイを耳に当てる。


「はい!もしもし!」

「っ!……、なんだ、どうした…?」



ケータイから聞こえてきたのは一瞬息を飲んで、それから小さく咳払いをしたとしくんの低く小さな呟くような声。



「?…どうしたって、としくんからかけてきたのにどうしたと言われましても…」



わたしが答えると今度は小さく笑った息づかいが聞こえる。



「ずいぶんテンション高いじゃねぇか。なんか良いことでもあったのか?」

「ん?いいこと?ふふ!多分としくんからの着信があったからかな!」

「………、」

「……?あれ?としくん?」



急に返事がなくなって、電話の向こうで何かあったのかと心配になる。



「としくん?」

「………、お前は…」

「???」

「なんでもねぇ。今近くまで来てる。少しだけでも出てこれねぇか?」

「え?」


そう言われて壁に掛けてある時計を見上げる。
現在の時刻は20時半を少しだけ過ぎたところ…。
言葉に詰まっていると「ダメか…?」と少し寂しそうな声に思わず



「あっ…、だっ…、ダメじゃない!」



と右手に拳を握って首をぶんぶん振って答えてしまった。



「ふっ…、じゃあお前の家の前の通りの先で待ってる」




あぁ…、
わたしって…、



つくづく弱いなぁ…
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