平助の母親

□73.
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☆★帰宅命令★☆QLOOKアクセス解析





蒸し暑い季節、扉を開け放った体育館ではオレらバスケ部とバレーボール部がスペースを半分ずつにして活動している。

ちょうど休憩をしようと先輩の声がかかって壁際に置いた荷物からタオルを出してペットボトルのドリンクを飲もうとしゃがんだところで、扉の前をすごい勢いで顧問の武田先生が校舎に向かって走っていくのが見えた。



「今のって…、武田先生だよな…?」
隣で汗をふく同級生に言えば

「あ?見てなかった。あいつって放課後ちゃんといるんだな?ソッコー帰ってんのかと思ってた」



なんて小バカにしたように笑った。

確かにバスケ部の顧問のくせに部活動には全くといっていいほどノータッチだし、試合なんかもほとんど部長と副部長がいろいろやってるみたいだし…。いる意味あるのかわかんねぇやつだ。

たまーに顔出したかと思ったら思い付くままに小言言って練習中断させたり邪魔してくるし…
ぶっちゃけ居ないならいない方が全然ましだっつーの。

そんなことを思いながらドリンクをゆっくり流し込んでいると、今度は校舎の方から土方先生に引っ張られるように走っていく武田先生が見えた。



「ぶはは!今の見たか?武田ダセー!」



ドリンクを吹き出しながら扉の先を指差して同級生が笑う。



「土方先生、なんかスッゲー鬼オーラ発動してたけど、武田のやつ、なんかやらかしたんかな?」



そう言ってぞろぞろと扉から顔を覗かせて二人が走っていった方を見ると、オレらの部室の前に、最近ほとんど練習に参加しないで部室で会議をしているとか言ってる先輩たちが立たされていた。
先生たちの姿はないけど、扉が開けたままになってるところを見ると、先生たちはきっと部室の中だ。

立たされてる先輩たちの様子から、なんだかあまり良い予感がしねぇ…。

同級生たちと顔を見合わせていると、隣の扉からも俺たちと同じように見ていた部長と副部長が部室に向かって出ていった。



「?」



俺たちも行っていいのかわかんなかったけど、部長たちに続いて他のやつらも次々と体育館を飛び出していくのを見てオレと一緒に見ていた同級生も「いこうぜ」といって出ていくから、もう一人の同級生と顔を見合わせて扉から飛び出した。


部室に近付けば、グラウンドで活動している部活の連中もその場で立ち止まってみんながこっちを見て様子を伺っていた。

それくらい異様な雰囲気がバスケ部の部室からあふれでていた。

中から土方先生が出てくると、集まったオレたちを見てはぁっといつものようにため息をついてから話し出した。



「お前ら、今日はもう解散だ。今すぐ片付けて帰れ、いいな」



そういうと訳も言わずに部室を立ち去る。
土方先生の言葉に立たされていた三年以外の部員がざわめき、部長と副部長が武田先生に訳を聞こうと詰め寄ると、



「ほらほら!土方先生が帰れと言っているんだ。さっさとしないかね!」



まったくまったくと言いながらオレたちを掻き分けるように土方先生の後を追いかけるようにそそくさと去っていった。


「なんなんだよ一体…」



誰かがそう呟くと一斉にみんなが三年生に視線を向ける。

視線を向けられた三年たちは全員が視線をさ迷わせて、誰も何があったかなんて話そうとしない。
ただ、部長と副部長だけは何となく何が起こったのか分かっているようで、俺たちに向かって


「今日は後片付けはオレらでやるから…、お前たちは荷物取ってこい。すぐ帰りの準備をしてくれ」


と呟くように指示を出した。

何がなんだかさっぱりわかんねぇけど、先輩に出された指示には従わなきゃなんねぇし、俺たち一二年は全員訳わかんねぇまま帰り仕度を始めた。


そういえばさっき土方先生に部活終わったら道場に千鶴迎えにこいって言われたよな…。
まだ剣道部終わってねぇだろうけどとりあえず行くか。
剣道部が終わるまで待つにしろ先に帰るにしろ、千鶴に言っとかなきゃな。
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