平助の母親

□72.
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体育館から渡り廊下を通り校舎に入ると廊下をフラフラと歩く人影が目に入った。

逆光でよく見えなかったが俺が近付くと慌てて耳に当てていたものをジャケットの内ポケットにしまいこんだ。



「武田先生…。私用電話ですか?」



立ち止まり横目で凄んで見せればいえいえとかぶりを振って否定するのはバスケ部顧問の武田だ。



「仕事の電話でしたら中で学校の電話を使ったらいいじゃないですか。校内で、個人的な用事の携帯電話の使用は禁止されているのはわかっていますよね?」



今のご時世、家庭の都合による生徒には携帯電話の持ち込みの許可は与えてあるが、校内での使用は一切禁止している。
緊急の連絡は全て学校に連絡をすべきと定めてあるからだ。

それは生徒でも教師でも同じことで、生徒に禁止している事を教師がやっていては生徒に対して示しがつかない。

だから先程俺が校内放送で呼ばれたように、緊急の場合であっても校内でケータイを使用するということは極めてあり得ないこと。
見かければ生徒であっても教師であっても俺は誰彼構わず注意をする。


今俺に注意を受けたこの武田先生は俺よりもずっと年上で教員歴も長い。
だが、その職歴に傲りきって誰からも注意されないと勘違いしているようだが、俺が教頭に就任してからというもの、俺の顔を見ればとんずらしたり、逃げ切れずに話しかけられればご機嫌とりのように媚びへつらった厭らしい顔を見せてくる。



「いやぁすいませんねぇ…。休憩時間にどうしても連絡をつけなくてはいけない用件がありましてねぇ」

「休憩時間…。休憩時間だろうがなんだろうが禁止されているのがわかっているんだったら以後気を付けて下さいよ。
……それに…、部活の顧問ですよね?いくら自分がバスケの経験がないにしろ、生徒たちの活動くらいしっかり見ておかないと…。さっき部室の前を通りかかったら三年生が部室で何か籠ってやってましたよ。」



すぐに行けとばかりに視線を向けると顔には出さなかったが渋々といった感じでその場を離れていった。


武田が校舎を出ていくのを確認して職員室の扉を開けて中に入れば、呼び出しをした教師が「応接室で校長先生がお待ちですよ」と声をかけてきた。

言われるままに校長席の横の扉から応接室に入れば、そこには近藤さんと今まで全く連絡の取れなかった名前が和気あいあいと微笑みあいながら談笑している光景が飛び込んできた。



「名前…っ!?」



てっきり平助が帰る頃まで布団の中で寝ているだろうと思っていたヤツの姿がこんなとこにあるなんて誰が予想する?

呆気にとられ扉を開いた状態のままの俺にはははと笑う近藤さんが立ち上がって俺をソファに座るように部屋のなかに引きずり込んだ。
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