平助の母親
□68.
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☆★目覚めたらあなたがいて…。★☆
う………、
ポカリ……………、
寝返りをうって腕に力を入れて肩を布団から持ち上げる。
うぅぅ…、
毎度の事とはいえ、
辛いなぁ〜…。
手を伸ばして手探りで触れたストローの刺さったペットボトルを倒さないように気を付けて掴んで引き寄せて、上半身を肘で支えた状態でストローを口にくわえる。
ちゅうっと吸えば、もう温くなって全然冷たくない甘い液体が喉を通りすぎていく。
うぅ〜…、甘い…。
温いポカリは甘すぎる!
ペットボトルをぐいっと手を伸ばして遠ざけてそのまま両腕の間に顔を埋める。
あぅ…。
氷枕ももうぬるい…。
……………。
…………………。
…………。
替えよう。
とはいえ、思うように動かない体をゆっくりと起こしてやっとの思いで起き上がるのも一苦労。
布団の上に座って辺りを見回せばまだ真っ暗で、朝日が昇るのはまだまだ先みたい。
結構寝たと思たのに…。
熱の高い夜ってどうしてこんなに長いんだろう…。
ハァっとため息をついて重い体に気合いを入れて氷枕を持って部屋のドアを開ける。
「うぅ…!」
真っ暗だと思ていたのにドアを開けると明るい光が目に飛び込んできて思いっきり顔をしかめてしまう。
「名前!?」
顔をしかめたと同時にドアの戸口に寄り掛かってしまい氷枕が足元に落ちてしまって、
眩しくて驚いて、氷枕落として驚いて、
更にはとしくんの声まで聞こえて驚いて、
………って!えぇっ!?
戸口に寄り掛かりながらリビングの方を見れば見れば……、
……二度見しちゃったけど、
そこにはTシャツ姿のとしくんが慌ててこっちに駆け寄ってくるのが見えた。
「え…、あ…、あれ……?」
なんでいるの?
なんだかよくわからなくって、足の力が抜けてしまって戸口を滑るようにへたりこむと、
駆け寄ってきたとしくんがしゃがみこんでわたしの両肩に手を伸ばして支えるように抱き寄せてくれる。
「どーした!?起きて来て大丈夫なのか!?」
「あ…、れ…?……としくん?なんで…
?」
としくんの腕に支えられて見上げれば、ものすごく近い距離で心配そうな眼差しをわたしに向けてくれている。
「なんでって…、こんな状態のお前を置いて帰れるわけねぇだろうが…」
そう言うと右手でわたしの前髪をかきあげるようにおでこを撫でる。
「…まだ熱いな……。冷えぴたは?取れちまったのか?」
優しく撫でてくれるとしくんの掌に思わず目を閉じてうっとりしてしまうけど…。
「てか…、……なんで…?」
ぱちっと目を開けてとしくんの顔を見上げれば、
「魘されてるお前を一人にさせられねぇだろ?」
ふっと笑ってゆっくりとわたしを支えて立ち上がらせてくれる。
「でも…、」
平助だっているし、いつもの事だし、としくんだって明日お仕事なのに…
言いたいこと、聞きたいことたくさんあるのに言葉にならなくて、としくんの顔を見上げる事しかできないでいると、
「余計なことは考えなくていい。俺がここにいたかったからいるだけだ」
そう言ってわたしを布団の上に座らせて膝の上にタオルケットをかける。
「で?お前は何したかったんだ?」
ポンポンと頭を撫でられて、そういえばとさっき落としてしまった氷枕を振り向いて見れば、また大きな手を頭に置かれて、としくんが立ち上がろうと腰を浮かす。
「あ…、大丈夫です。自分で…」
そこまで言うと、ポンポンと少し強めに頭を叩かれ、としくんの顔が目の前に近付き、
「俺がいるときは俺を頼れ」
じっと真正面から睨まれてそう言うともう一度ポンと頭を叩いて立ち上がり、氷枕を拾い上げて部屋の外へと出ていってしまった。