平助の母親
□66.
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☆★オレと千鶴とかぁちゃんと土方先生。★☆
かぁちゃんの部屋の引出しから冷えぴたを出して土方先生の顔の前につき出す。
「……?」
目の前に出されて一瞬目を寄り目にして見てから『これはなんだ』という目でオレを見上げる土方先生。
「冷えぴた。かぁちゃんのでこ触るんだったらこれ貼ってからにしろよな」
ふんと鼻から呆れたため息を出して言ってやるとそれをオレの手から受け取って剥離フィルムを剥がす土方先生の手。
いつもは色々器用にこなすくせに、なんか焦ってるからかなんなのか、なかなか上手く剥がせないのと、さっきオレが言ったセリフのせいで髪の隙間から見える耳が赤くなってチョー必死なんですけど…!
つい顔がにやけてくっと喉が鳴ってしまう。
おっと笑っちゃいけない場面だよな。
片手で目の下半分覆って隠せばバッと土方先生の冷えぴたを持つ手が俺に向かって伸びてきた。
「っ!?な、なに?」
一瞬、笑ってたのがバレたのかと思って焦ったけど、土方先生を見下ろせば先生の顔はさっきの姿勢と同じで髪から赤い耳を覗かせたまま下を向いていてこっちを見ていない。
オレに向かっているのは勢いよく差し出された冷えぴたを持つ手だけ。
「…………」
「…………なに?」
「剥がしてくれ」
「へ?」
「剥がしてから渡せって言ってんだよ」
ぶっきらぼうに言ってさらに腕をぐいっと伸ばしてオレに突きつける。
本当だったらどんだけオレ様だよ!って突っ込むとこだけど、さっきの必死な姿見たら、いちいち突っかかるのもめんどくさいっつーか……。
「もー、土方先生どんだけだよ」
呆れながら土方先生の手から冷えぴたを受け取って剥離フィルムをぺりっと剥がす。
「ほらよ。上手く貼れよ?」
「……うるせぇ」
ちょっとバカにしたような言い方になっちまったかな?
うるせぇだってよ。
拗ねた土方先生の耳を見ながら剥離フィルムをくしゃっと丸めてリビングのゴミ箱に捨てにいく。
そん時見えた土方先生の背中と髪に隠れた横顔は、学校では絶対見ることねぇだろうと思うくらい……
土方先生らしくない姿だった。